介護現場は、対人援助という側面から誤解や不満が起きやすいサービスであるといえます。適正に対応することができないと、二次的なクレームに発展する危険性、また風評被害を招く恐れもあります。そこで今回は、介護現場でのクレーム事例と対処法についてご紹介します。日頃の運営のご参考になれば幸いです。
クレームとは?
クレームとは、サービスに対する苦情や改善要求のことです。一般的な社会のクレームは、「丁寧に対応してほしい」、「早く対応してほしい」といったことが多いでしょう。
クレームを受けたときには、文句を言われたとネガティブに捉えがちです。しかし、自社のサービスを向上させるきっかけと考え、クレームから皆で学ぶ姿勢が重要です。問題に対して迅速に対応するようにしましょう。
介護現場でのクレーム事例
介護現場でのクレームには、どのようなものがあるでしょうか。3つの事例とその対応についてご紹介します。
- 施設の申し込みをしていて、近日中に入所ができると思っていたが、現在は受け入れが困難な状況であると言われた
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説明不足や誤解はコミュニケーション不足によるものが多いです。こちらが伝えた内容と、相手が理解していた内容に差がある場合に起こりやすいです。施設長や相談員から見れば当たり前である事でも、利用者のご家族から見れば介護保険上の決まりごとなどは難しく感じます。「説明したから分かっているだろう」という理屈は通用しないと考えましょう。相手の理解に合わせて説明すること、説明したことを理解してもらえたか確認を重ねながら話を進めるテクニックを身につけましょう。
- 貴重品の紛失
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介護施設では、高価な物や大切なものの持ち込みをお断りしています。また、利用者様の手荷物の紛失を防ぐために、利用者様が施設に到着すると、利用者様の持ち物の種類や数、特徴などをチェックし、帰りも同じことをします。ところが、利用者様は施設内のどこかに物を置き忘れたり、紛失してしまったりすることが多々あります。また、介護職員も人間ですから、時には種類や数のチェック漏れなどのミスもあります。
対策としては、職員による持ち物チェックを2、3人の複数体制で行うことです。また、利用者様のご家族に対して、大切なものや高価なものを荷物に入れないように、改めて説明し理解していただけるように努めることです。
- 介護職員の爪が長く伸びてマニキュアをしているのが気になった
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身だしなみに関するクレームは多いです。上記事例以外にも髪色や髪形、ピアスなどのアクセサリーといった様々なケースがあります。服務規程などを参考に、職員にはしっかりと理由を説明して、おしゃれと身だしなみは違うと理解、納得してもらうことが大切です。
クレーム対応の5つのテクニック
介護は対人サービスなので、様々なクレームが起きやすい業界です。クレームが発生した際の一次対応を怠ると、さらに相手を不快にさせることにつながるため注意が必要です。そこで、クレーム対応のテクニックについて5つご紹介します。
最初に話をお聞きするのが遅くなったことにお詫びの言葉を
クレームでは、相手からのお詫びの言葉を求めることが多いですが、クレームになった事案そのものについては即座に謝罪やお詫びをするべきではありません。しかし、お詫びの言葉をクッション言葉として次に繋げることはできます。「すぐに不満の気持ちに気付けずに、お話をお聞きするのが遅くなって申し訳ありませんでした」というお詫びの言葉を添えることが有効です。お気持ちの変化に気づくことができなくて申し訳ないとお詫びすることは、接遇的な観点からも良い対応です。
傾聴
まずは相手が何に対して怒っているのか、どうしてほしいのかを含めて丁寧に経緯と内容を聞き取りましょう。相手の話を遮らずに共感の姿勢を示しながら傾聴に徹し、内容を整理していきましょう。最後まで話をよく聞くことが最も大切な姿勢です。
相槌は適度に入れ、話には割り込まない
接遇やマナーとして、相手が話しているときは割り込まないということは多くの人が意識しているでしょう。しかし、自分にとっては理不尽な訴えを一方的にされていたり、相手が完全に誤解していたりすると割り込んで否定したくなります。しかし、相手が興奮して誤解したまま訴えたり、侮辱的な発言などまで含んでいるときは落ち着いて全て聞き、その日は答えを出さずに持ち帰ることが有効です。
解決策や代替案などを検討
苦情対応の責任者を中心に解決策や代替案などを検討し、時間を空けずに示しましょう。重要事項説明書などを基に説明を行い、対応の必要があれば可能な限り、要望に沿う姿勢を見せるべきでしょう。
要望を話してくださったことへのお詫びの言葉を伝える
クレームは業務改善やサービス品質向上のきっかけにもなります。得るものが少しでもあったら「業務改善やサービス品質向上の気付きのきっかけを与えてくださりありがとうございます」というニュアンスを伝えるようにしましょう。