一般的に介護の仕事は高齢者に身体介護や生活援助をする仕事になります。
身体介護では高齢者をベッドから車いすへ移乗させたり、入浴の介助、トイレ介助など高齢者を抱きかかえたり身体を支えたりする場面が一日に何度もあり、非常に体力を要するものになります。
介護職で長く働き続けるためには、日頃の業務のなかで腰に負担をかけすぎないように気をつけなければなりません。
そこで今回は、腰痛の主な原因となる動作や姿勢、腰痛につながりやすい業務から予防対策までご説明します。
腰痛の要因
腰痛が起こる要因は、主に3つだと言われています。
動作的要因
一つ目は動的要因です。
高齢者の移動の際に持ち上げる行為、用具などの重いものをひんぱんに持ち上げる行為、無理な姿勢で作業するといった動作による、腰への過度な負担・負荷が原因になります。こういった動作や姿勢が腰に負担をかけるのです。
環境的要因
二つ目は、環境的要因です。
介護現場は部屋の移動が多く、なかには暖房がなく寒くて冷える場所も多々あります。
また、ベッドなどの配置が悪く移動しづらいことや照明が暗く足元の様子を確認しづらい、職場の床材が滑りやすく、足腰に負担がかかりやすいといった職場の環境に関係することがあります。そういった環境が原因で腰に負担をかけるのです。
個人的要因
三つ目は、個人的要因です。
年齢や性別、体格、筋力、既往歴、基礎疾患の有無など、個人的な属性に関わることです。腰痛の原因は、例え同じ動作をしていたとしても、個人によって変わってくるのです。
この三つの要因が重なることによって腰痛が引き起こされる可能性が高いのです。原因はどれかひとつというよりも複数の原因が重なっている場合が多いです。
腰の負担になる動作や姿勢
介護の業務では、腰痛を起こしやすい動作や姿勢をする場面が多く見られます。
人によって痛みが発生する動作や姿勢があると思うので、押さえておいた方がよいでしょう。主に、代表的なものは以下の4つです。
持ち上げる際の動作
高齢者がトイレに行く際や車椅子から降りてベッドに移動する際などには、介護スタッフが高齢者を抱え持ち上げる際に動作が発生します。介護業務につきものである移乗介助は、一日に複数回行う動作なので、腰に負荷がかかり、腰痛の原因になりやすい動きです。
腰をひねる動作
食事をサポートする食事介助では、介護スタッフが高齢者の隣に腰掛けて介助を行います。一人の高齢者につき、約30分から一時間ほど食事に時間がかかります。その間、高齢者に体を向けて行うのでどうしても腰をひねる動きになってしまい、腰に負担がかかります。同様に、入浴介助や移乗介助も、腰をひねる動きがどうしても必要な業務になります。
中腰前かがみの姿勢
高齢者の入浴介助やトイレ介助、おむつ交換、体位交換などで一定時間、中腰の前かがみの姿勢になることが多いでしょう。中腰前かがみの姿勢もその都度、腰に負担がかかります。
長時間の同じ姿勢の持続
長時間にわたって同じ姿勢でいることも、腰に負担がかかる原因のひとつです。介護の現場では休憩を取ることができずに長時間にわたって立ち仕事を続ける場合などが当てはまります。
人によってどの動作、姿勢が辛いかを把握したうえで、どのような対策を講じればよいのかを考える必要があります。
腰痛への予防、対策
身体に負担のかかりにくい姿勢や動作を身につけることが大切になります。
例えば、正しい動きでの移乗を身につける必要があります。
ベッドから車いすへの移乗は車いすをできるだけベッドに近づけ、介護される方の身体をスライドさせると腰に負担がかかりづらいです。
また、高齢者の身体を小さくすることと摩擦をなくし、重心の高さを合わせて密着することにより、より簡単に移動することができます。
他にも、食事介助の際には、腰をひねらず、体ごと要介護者に向けるようにすると良いでしょう。
普段の姿勢の良し悪しも腰に影響するので、立っているときの姿勢や座っているときの姿勢にはできる限り背筋を伸ばし、正しい姿勢を保つように意識することが重要になってきます。
また、長時間同じ姿勢にならないようにすることも大事です。
長時間立ちっぱなしにならないよう、立ち仕事が続くときには適度なタイミングで座って休憩を取るよう意識することが大事になります。
休憩が取れるように会社に要望することは労働者の権利です。
腰痛は介護職に多いので、自分の身体のことだけでなく、周りの働いている人たちの為にも長期的に働けるように話し合いができるといいですね。
休憩だけでなく、立ち仕事の間に座ってできるデスクワークを挟むなど、姿勢に変化のある作業計画を立てて同じ作業が続かないようにすることも大切になります。
正しいからだの使い方をマスターすることで腰痛予防をしましょう。
そして、腰痛に困っている人が少なくないという事実を意識して少しでも負担を減らすことができるように正しい姿勢、動作に改善していきましょう。