介護現場では「デジタルトランスフォーメーション」の必要性が重視されつつありますが、その背景には介護業界の深刻化する人手不足と高齢者増加が関係しています。
従来の介護現場での対応では、増え続ける高齢者に対して適切な介護サービスを提供できるとはいえず、積極的にデジタル化を進めていかなければならないと状況にあるといえるでしょう。
さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響も、デジタルトランスフォーメーションの必要性を高めることとなりました。
そこで、介護現場で重視されつつある「デジタルトランスフォーメーション」について説明します。
「デジタルトランスフォーメーション」の特徴
「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とは、デジタル技術を浸透させることによって人々の生活を様々な方向からより良い方向に変えていくことです。
ITやICTを活用することによって社会に変化をもたらすイメージですが、ビジネス環境の激しい変化に企業が対応していくためにデジタル技術を活用することで、製品・サービス・ビジネスモデルを変革させ、業務・プロセス・組織・企業文化・風土などを変えて競争での優位性を確立することといえます。
介護現場でもITやICTを導入することで、業務や組織を見直し、業務効率化や競合他社との競争に打ち勝つことにつながることとなるでしょう。
介護現場で「デジタルトランスフォーメーション」が求められる理由
介護現場で「デジタルトランスフォーメーション」が求められている背景には、先にも述べたとおり業界全体の人員不足が関係しています。
介護業界は慢性的な人材不足という大きな悩みを抱えているのに反し、介護を必要とする高齢者は増加の一途を辿っています。
2025年に団塊の世代が後期高齢者に達すれば、さらに介護ニーズは大きくなるといえるでしょう。
人材を獲得するために有効な策を立てることだけでなく、介護現場にICTやAI、介護ロボットなど最新技術を導入することで、業務を効率化させ生産性向上とスタッフの負担軽減につなげていくことが必要とされます。
さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響で、リモートワークも含めた業務改善なども必要とされるようになりました。
利用者との接触が業務上欠かすことのできない介護現場で、すべての業務をリモートワークで対応することはできませんが、事務処理などできる範囲での対応も求められています。
介護事業所が運営を継続させる上で、デジタルトランスフォーメーションは避けて通ることのできない課題となっているといえるでしょう。
「デジタルトランスフォーメーション」導入を成功させるために必要な段階
「デジタルトランスフォーメーション」導入を成功させるためには、単にITなどを活用するだけでは十分といえません。
そこで、
①アナログの仕組みを洗い出しデジタル化する「デジタイゼーション」
②デジタル化した仕組みの活用で新しい行動様式を作る「デジタライゼーション」
③組織を変革し介護事業所の価値を向上させる「デジタルトランスフォーメーション」
の3つの段階で導入していくことを検討しましょう。
それぞれの段階について説明していきます。
①アナログの仕組みを洗い出しデジタル化する「デジタイゼーション」
介護現場のアナログの仕組みの中から、デジタル化を可能とする仕組みを洗い出し、積極的にデジタル化していきましょう。
たとえば手作業の紙媒体で行っている介護記録は、介護記録ソフトを活用することなどが例として挙げられます。
他にも帳票類などデータ化し、介護スタッフ同士で情報共有できるようにしておくこともできるでしょう。
会議は対面ではなくオンライン会議に変えることも方法の1つです。
②デジタル化した仕組みの活用で新しい行動様式を作る「デジタライゼーション」
既存の仕組みなどをデジタル化した後は、積極的に活用し、さらに業務を効率化させていきましょう。
たとえば見守りカメラやベッドセンサーなどを設置し、利用者を見守ることなどが挙げられます。
③組織を変革し介護事業所の価値を向上させる「デジタルトランスフォーメーション」
①と②の2つの段階を経て、いよいよデジタルトランスフォーメーションへとつなげます。
そのためにもデジタル化した仕組みを介護事業所に定着させることが重要です。
介護記録や見守り業務などこれまで介護スタッフが多くの時間を割いていた業務をデジタル化することにより、業務負担や業務時間が大きく削減でき、利用者に対して提供するサービスの質も向上させることができるでしょう。
また、介護スタッフの業務負担が軽減できることで、仕事に対するやりがいを感じやすくなり、気持ちにもゆとりができればモチベーションも向上させることができます。
介護現場で問題となっている介護スタッフの離職率を低下させ、反対に定着率をアップさせ人材も獲得しやすくなるでしょう。