ケガや病気などで関節の動く機会が少なくなったことにより、関節の動きが制限されることを「拘縮」といいますが、予防するためには介護現場でのポジショニングが重要です。
拘縮にも種類があり、原因やポジショニングによる対策などが異なるため、介護を必要とする方のケアを行うときにはその違いを知っておくことが必要といえます。
そこで、拘縮を防ぐためのポジショニングと、介護現場で注意しておくべきことについて説明していきます。
拘縮とはどのような状態か
関節の動きが制限され、動かしにくくなる状態を「拘縮」といいます。
これは、ケガや病気、寝たきり状態などで動かさなくなった関節の周りに存在する皮膚や筋肉などにコラーゲン繊維が蓄積するからです。
縮んでしまった筋・腱・関節包(関節を覆う膜)・皮膚などにコラーゲン線維が絡みつくことで伸びなくなり、狭くなった関節可動域の部位をこれまで通り動かそうとすれば痛みを伴います。
体を動かすことに苦痛を感じるようになり、より動かしにくくなればさらに拘縮が進んでしまいます。
拘縮の5つの種類
拘縮と呼ばれる状態には種類があり、主に次の5つに分けることができます。
- 筋性拘縮
- 神経性拘縮
- 皮膚性拘縮
- 結合組織性拘縮
- 関節性拘縮
それぞれの状態について説明します。
筋性拘縮
筋肉が衰えることや、関節が長期間固定されていたことを理由に可動域が制限されてしまうのが「筋性拘縮」です。
ケガや病気などで寝たきり状態になったケースで多くみられる拘縮であり、全身が拘縮している傾向にあるといえます。
神経性拘縮
神経系疾患などによるマヒや痛みが原因で生じる可動域制限が「神経性拘縮」で、事故の後遺症や脳卒中など脳神経系の疾患などで起きやすいといえます。
皮膚性拘縮
熱傷や炎症などを原因とした傷痕に引きつられて起きる可動域制限が「皮膚性拘縮」で、瘢痕拘縮といわれることもあり、皮膚が弾性を失った状態になってしまいます。
結合組織性拘縮
皮下軟部組織・靭帯・腱など結合組織が短縮・癒着することにより起きる可動域制限が「結合組織性拘縮」で、外傷や術後の修復過程、生活習慣により起きる可能性がある拘縮です。
関節性拘縮
滑膜・関節包・靭帯などが炎症・損傷し癒着することによって起きる可動域制限が「関節性拘縮」で、骨折・脱臼など治療過程で起きやすいことが特徴といえます。
特発性拘縮
原因が特定できない拘縮が特発性拘縮です。
なぜ高齢者は拘縮を起こしやすいのか
高齢者は拘縮を起こしやすいと考えられますが、加齢やケガ・病気などが主な原因です。
寝たきり状態になれば身体を動かす機会を失い、さらに深刻な状態になってしまうと考えられるでしょう。
そうなる前に、拘縮を起こさないため予防したほうが良いと考えられます。
拘縮が起きてしまいやすい部位は関節部位ですが、手指・肩・肘・股・膝・足など人の体にはいろいろな場所に「関節」が存在します。
たとえば外傷や神経麻痺などで手指に拘縮がおきれば、手首が内側に曲がって手指が伸びなくなります。
肩・肘の拘縮では、肩関節周りの筋肉や腱の癒着により動きが悪くなり、腕が上がらなくなるため衣服の着脱や食事などの動作が困難になるでしょう。
下肢(股・膝・足首)の拘縮は、股関節脱臼・大腿骨骨折・ずっと座ったままの姿勢など活動量低下などで拘縮が起きやすいですが、衣類の着脱や入浴などに支障が出ます。
歩行も難しくなるため、転倒のリスクを高めてしまうこととなるでしょう。
利用者の拘縮を予防するために重要な「ポジショニング」
「ポジショニング」とは、関節拘縮を緩和させるための体位変換のことです。
拘縮が進み、関節を動かせなくなれば手術を必要とするケースもあるため、予防と進行を防ぐための方法としてポジショニングが欠かせません。
拘縮の予防や進行を防ぐ方法には、関節可動域訓練や動作練習などもあります。
関節可動域訓練では関節を動かし、可動域を確保・維持することを目的としてストレッチやリラクゼーションなどを行います。
動作練習では日々の生活の中で関節をしっかりと動かす訓練を行いますが、椅子に座ったり立ち上がったりといった普段の動作や、手首など関節を疼痛が生じない範囲で動かします。
ただ、関節可動域訓練と動作練習は、リハビリの専門である理学療法士や作業療法士の指導のもとで行うことが望ましく、介護スタッフのみで対応しないほうがよいといえます。
介護スタッフが拘縮を防ぐためにできることこそがポジショニングであり、姿勢を安定させ体圧を分散させるようポジションを作ります。
正しいポジショニングとは、抗重力筋の影響を強く受ける背中側の緊張を和らげることであり、たとえば寝たきりの方のポジショニングでは、頭部・胸部・大腿・下腿の下などにクッションなどを挟み込んで隙間をつくらないように安定させます。
拘縮が起きている部位やどの程度進んでいるかによって適切なポジショニングは異なるため、利用者に合ったケアが必要です。