介護施設のうち、2交代制でスタッフをまわしている場合には、夜勤の時間帯はスタッフが1人で対応しなければならない「ワンオペ夜勤」となっていることが少なくありません。
介護スタッフの1人夜勤が常態化してしまうと、夜間の緊急時には単独による対応が必要となるため、プレッシャーを感じてしまうケースもあるようです。
利用者の体調悪化や転倒など、何らかの異変が複数同時に起きてしまったら…という環境でのワンオペ夜勤は、現場で働く介護スタッフにとって危うさが指摘されるリスクの大きな働き方といえるでしょう。
そこで、単独で夜勤を担当する介護業界のワンオペ夜勤事情について解説していきます。
2交代制の介護現場6割はワンオペ夜勤
2019年に公表された「介護施設夜勤実態調査」では、2交代制を採用している施設の約6割がワンオペ勤務体制でした。
その中でもワンオペ勤務が多かったのは、グループホームや小規模多機能施設など利用者数の少ない施設です。
夜間は利用者も就寝しているため、特に問題は起きないと軽視していると、万一発生した緊急トラブルに介護スタッフが1人で対応しなければならなくなってしまいます。
そのような状況下に置かれた状態で働く介護スタッフは、精神的なストレスを抱えることになるでしょうし、十分に対応が行き届かなかったために生命を落とす利用者が出ないとも限りません。
ワンオペ勤務体制の介護施設の場合、次のような状況で介護スタッフが働くことになります。
- オンコール体制で対応することが多い
- 緊急時には冷静に対応することが求められる
それぞれ詳しく説明します。
・オンコール体制で対応することが多い
オンコール体制とは、緊急連絡を医師や看護師が受け、即座に対応する仕組みです。
施設によっては、施設長や近隣に住むスタッフなどが対応することもあるでしょうが、夜勤は施設のオンコール体制で対応することも多くなると留意しておきましょう。
・緊急時には冷静に対応することが求められる
夜勤の仕事では、緊急時に冷静に対応できることも求められます。
トラブルが発生したときに、慌ててパニックを起こさないためにも、日頃から緊急時の対応マニュアルに目を通すといったことも必要です。
介護現場での夜勤回数の上限
介護現場での夜勤回数には、特に法的な制限は設けられていません。
労働基準法にも夜勤の上限回数など規定がないため、夜勤回数は介護施設が独自で決めることとなるでしょう。
ただし月に何度でも夜勤をシフトとして組み入れることができるわけではなく、まず労働基準法の1日の勤務時間8時間までという規定に従うことが必要です。
夜勤の多くは8時間を超えてしまうため、1週間の労働時間は40時間以内に調整する「変形労働時間制」が適応されることになります。
夜勤を担当する介護スタッフの1週間の労働時間を40時間以内に抑えようとすれば、夜勤を担当できる回数は制限されるといえます。
そもそも夜勤が頻繁にあると介護スタッフの体力負担も大きいため、夜勤を担当する回数には配慮が必要です。
夜勤専従という働き方とそのメリット
入所型の介護施設の場合、夜勤のみを担当する夜勤専従という働き方でスタッフを募集していることもあります。
夜勤専従として働く介護スタッフの場合、夜間だけを担当することになるため大変とイメージされやすいですが、実は次のようなメリットがあると考えられます。
- 夜間を専門とするため日勤に自由な時間がとりやすい
- 時給が高めに設定されている
それぞれ詳しく説明していきます。
・夜間を専門とするため日勤に自由な時間がとりやすい
夜間のみを担当する介護スタッフとして働くため、日勤と夜勤が混ざるシフト勤務よりも、日勤の時間帯を自由に使いやすいことがメリットです。
また、働く時間帯がいつも同じになるため、ライフスタイルを確立しやすいのもメリットといえるでしょう。
・時給が高めに設定されている
夜勤をすると夜勤手当が付与されるため、時給が高めに設定されており、同じ時間の長さで日中働くよりも受け取る給料が高くなるのはメリットです。
また、日中は仕事がないため、空き時間を活用したダブルワークも検討できます。
介護施設のワンオペ夜勤を解消するように労働組合が要請書を提出
2021年2月、日本医療労働組合連合会は、介護施設の夜勤の労働環境を改善するように働きかける要請書を厚生労働省へ提出するとしました。
介護職を対象に行った調査では、夜勤が16時間など長時間におよぶ交替制の施設が、全体の82%を占めていたためです。
ワンオペ夜勤だったのは調査を行ったすべてのグループホーム・小多機・看多機で、特養やショートステイなども半数近くがワンオペ夜勤体制だったとされています。
- 夜勤は複数体制を原則とするべき
- 休憩時間も利用者の状況によりすぐに対応が必要な手待ち時間になっていること
などを指摘し、労働基準法違反(休憩の不付与)を解消すべきとしていますが、今後の国の方針にも注目しておきましょう。