介護現場では、1人では着替えができない利用者に対し、着脱介助(更衣介助)を行うことが必要です。
体が不自由などの事情を抱えている利用者の着替えをサポートするのが着脱介助ですが、その手順やスムーズに行うために押さえておきたいポイントについて解説していきます。
着脱介助を行うときの手順
利用者に対して行う着脱介助は、
- 座っているときの姿勢
- 横になっているときの姿勢
ではその手順が異なります。
それぞれの手順は次のとおりです。
・座っているときの姿勢で着脱介助を行う手順
- 上着をたくしあげて、痛みや拘縮のない側の腕を袖から抜く
- 頭から上着を抜き、痛みや拘縮がある側の腕を袖から抜く
- 上着を脱いだことによる痛みや拘縮がみられる側の腕を袖に通す
- 痛みや拘縮がみられない側の腕を袖に通す
- ボトムスは、ウエスト部分までズボンを下げ、立ち上がってもらいズボンを臀部の下まで引き下ろし一旦座ってもらう
- 左右のズボンをおろして抜き、新しいズボンを片足ずつ入れて臀部の下まで持っていく
- 再度立ってもらいズボンを穿かせる
・ベッドに横になっている状態で着脱介助を行う手順
- ボタンをあけて肩部分を露出させる
- 横向きになってもらい、上側になった部分の上着を脱がして袖を抜く
- 半身を脱いでもらった状態で脱いだ部分に新しい服を通す
- 仰向けになってもらい古い衣服の袖を抜く
- ②と反対方向の腕を上側にして新しい衣服を通し整える
- 横向き状態になってもらい、臀部の下までズボンを下げる
- 仰向けになってもらい、ズボンを交互にずらし脱がせる
- 新しい衣服を足先から通し、太もも部分まで引き上げる
- 横向きになってもらいズボンを引き上げる
着脱介助を行うときに注意しておきたいこと5つ
利用者の着脱介助では、着替えてもらうまでに、着用する下着や靴下の準備だけでなく、肌を隠すためのバスタオルやブランケットなどの準備も必要です。
その上で、次の5つに注意して着脱介助を行うようにしましょう。
- 部屋の温度調整
- 転倒・転落リスクへの配慮
- 皮膚の状態など観察
- 慎重に接触するべき部位に注意
- 利用者本人ができない部分のみサポート
それぞれ詳しく説明します。
・部屋の温度調整
服を着替えるときには肌が露出するため、室内の温度調整を23~25℃前後の適温に保つようにしておきましょう。
・転倒・転落リスクへの配慮
着替えの際には椅子やベッドに腰掛けてもらうことになるため、バランスがとれずふらつくことや、身体を動かしたタイミングで転倒するリスクに注意しましょう。
・皮膚の状態など観察
着脱介助は着替えをすればよいだけでなく、皮膚の状態などもチェックするようにしましょう。乾燥・傷・アザなどはないか、臀部の褥瘡など観察・記録することが必要です。
・慎重に接触するべき部位に注意
身体にマヒや拘縮がある利用者の介助は、患部を強くつかんだり引っ張ったりなどなく、慎重に接触する部位に注意してください。
スムーズに動かすことができなければ介助もやりにくさを感じるでしょうが、無理に力を加えれば悪化させる原因となります。
・利用者本人ができない部分のみサポート
寝たきりの方など全介助の方であれば、全面的なサポートが必要となるでしょう。
しかし一部のみ介助が必要という方の場合、できることは利用者本人にできるだけやってもらうようにして、できない部分のみサポートするようにしましょう。
利用者本人ができることまでサポートしてしまうと、利用者の身体機能を維持できなくなります。
ただし介助なしでできると決めつけはせず、その日の体調などによっては本人だけでできない日もある可能性も考え、コミュニケーションをとりながら変化に応じた適切な対応が必要です。
着脱介助をスムーズに行うために押さえておきたい3つのポイント
着脱介助をスムーズに行うためには、主に次の3つをポイントとして押さえておくようにしましょう。
- 着脱しやすい衣服を選択する
- 片麻痺の方は着患脱健(ちゃっかんだっけん)を基本に
- 声かけをしながら介助する
それぞれ詳しく説明します。
・着脱しやすい衣服を選択する
伸縮性があり、ゆとりがあるなど、できるだけ着脱しやすい衣服を選ぶようにしましょう。
利用者本人が気に入っている服が望ましいですが、着脱が難しいときには介護用デザインの衣服などを選ぶと安心です。
・片麻痺の方は着患脱健(ちゃっかんだっけん)を基本に
着患脱健とは、「患側」から着用し、「健側」から脱ぐことを意味します。
「患側」とは麻痺などがある側のことであり、健側は麻痺などない正常な身体状態の側のことです。
片麻痺の方の場合、着脱介助は着患脱健が基本となりますので覚えておくとよいでしょう。
・声かけをしながら介助する
「少し膝を曲げます」
「腕を通しましょう」
など、行動をする前に一度声かけをして、次のアクションへと誘導するようにしてください。
声をかけずにいきなり身体を動かすと不安感を与えるだけでなく、転倒やケガのリスクも高めます。