介護現場は現在人手不足に悩まされているといえますが、離職者の多くは勤続3年未満で退職しています。
一旦は介護職に就いたとしても定着せず辞めてしまう理由として挙げられるのは、
- 職場環境が整備されていない
- 将来設計を立てることができない
といった2点に分けることができますが、さらにその背景には様々なことが関係していると考えられます。
職場環境が整備されておらず辞めてしまう
介護職の離職理由として、たとえば結婚・妊娠・出産・育児などライフイベントが発生したとき、それに対応できる職場環境が整備されていないことが挙げられます。
女性が多く活躍する現場であるからこそ、ライフイベントが発生した時に対応できる職場環境や、復帰可能とする環境であることが必要です。
また、職場の人間関係で悩み辞めてしまう方も多く、介護スタッフや他業種スタッフとの連携においてコミュニケーションが取れず、不満があっても相談する相手がいないと離職してしまうケースが後を絶ちません。
将来設計を立てることができないため離職
男性の介護職が離職する理由として、収入が低く将来性を感じないという理由や、他にもよい仕事があるといったことが挙げられます。
労働条件に不満を感じ、介護ではない分野に転職してしまう方も少なくないため、処遇改善が必要といえます。
国の施策は人手不足解消につながっていない?
厚生労働省も介護人材不足に対応するため、
- 処遇改善制度
- 介護業務の分化
- 外国人労働者の雇用
など様々な施策を打ち出しています。
処遇改善制度
介護職員の処遇改善制度により、平均給与は年々増加傾向にあるといえ、今後は全産業の平均賃金を目指すとされており、さらなる処遇改善が予定されています。
介護業務の分化
生産年齢人口が減少傾向にあるため、多様な人材を導入するといったことも検討されています。
元気な高齢者を介護助手として採用し、リタイア後に新たな就労先として働いてもらう事業所も少なくありません。
高齢者が介護助手として業務する際、知識や技術がなくてもできる業務と、一定のスキルが必要な業務と分け、年齢・体力・スキルに合った業務へ従事できるよう分化するといった取り組みも行われています。
無理なく働き続けることが可能となることで、介護助手として働く高齢者の介護予防にもつながると考えられています。
外国人労働者
人材不足に対応するために、平成31年からは外国人の在留資格「特定技能1号」制度がスタートしました。
日本語能力や技能については試験を受けてもらい、確認後に入国してもらい介護施設で5年間就労してもらいます。その後、介護福祉士の資格取得により、永続的に勤務してもらうこともできます。
人材定着に向けて現場が行うべき取り組みとは
介護現場では、雇用した人材が定着するように離職防止に向けた取り組みを行うことが必要です。
介護職員が離職してしまう理由を踏まえた上で、どのような取り組みが必要か考えることが必要ですが、主に次のようなことが求められます。
労働環境を改善する
介護現場は常に忙しく、介護業務以外の書類を作成することにも時間を取られがちです。
そのため事務的な作業に時間を多く取られ、残業が発生することも少なくありません。
さらに人手不足の事業所では、休みたくても有給休暇を取得しにくい環境にある場合も少なくないため、改善に向けて雇用管理責任者や相談窓口を設けいつでも不満や不安を相談できる体制を整備しましょう。
非正規雇用から正規雇用へ転換も可能とする
長期に渡り介護現場で働いてもらうためにも、非正規雇用の職員を正規雇用に転換する仕組みを制度として設けましょう。
未経験者はパート職員から仕事を覚えてもらい、だんだんと働きながら経験を積み、資格を取得するなど一定のスキルを得れば正社員になれる仕組みを作ることです。
介護職員も雇用形態や賃金が向上することで、やりがいを感じながらケアに従事できます。
介護ロボットやICTを活用する
高齢者の自立支援をサポートする介護ロボットは、介護職員の身体にかかる負担を軽減する上でも役立ちます。
遠隔地から高齢者を見守るロボットもあれば、移動の際にサポートするタイプのロボットもあるため、必要に応じて導入するとよいでしょう。
また、介護記録やシフト管理などは、従来の紙媒体からデジタル化へ転換させることで業務効率化につながり、介護職員の事務作業にかかる負担や時間の軽減にも有効です。
人材育成も適切に行うことが必要
介護職として現場で活躍できるように、研修や教育の制度を設けるなど、人材育成にも工夫が必要です。
定着率を高めるだけでなく、現場で提供するサービスの質そのものを向上させることにもつながります。
安全衛生研修として腰痛予防や感染症対策は、利用者だけでなく介護職の身体を守るためにも欠かせない研修ですので適切に実施するようにしてください。