少子高齢化により、介護の需要が高まっていることは理解できていても、現状について把握できているでしょうか。
介護業界は今、慢性的な人手不足に悩まされているため、そのしわ寄せが介護ケアを必要とする方にも及んでいます。
特別養護老人ホームに入所したくても空きがでず、入居一時金などを負担できず有料老人ホームにも入れないなど、その上自宅で介護を受けたくても十分なケアを利用できないといった問題が起きています。
家族にもその負担は及ぶこととなり、介護離職や心身の疲労などで、介護殺人や一家心中といった痛ましい事件も起きているのが現状です。
その現状を改善するために、今どのような対応が求められているのかご説明します。
高齢者増加と介護需要の高まりで自治体の負担も拡大
今後も日本は高齢化がさらに進んでいくと考えられていますが、このままでは2060年には2.5人に1人が高齢者となり、そのうちの約1割が認知症を発症すると推計されています。
介護を必要とする高齢者は明らかに増えていくことが予測されているのに、ケアを担当する人は年々減少しているといえます。
2015年4月に介護保険法が改正され、特別養護老人ホームへの新規入所要件は要介護3以上の方に限定されています。
新たに入所を希望する方の約35%を占めていた要介護1〜2の方は、特別養護老人ホームではなく別の施設を探さなければなりません。
さらに介護施設の建設費用の4分の3として支給されていた国の補助金も2005年に廃止となり、自治体の負担も大きくなっています。
介護施設に入所できない希望者も増加
それにより、新規で介護施設を建設することへのハードルが高くなり、さらに介護報酬の改定で介護報酬が減少するなど事業者にとっても厳しい状態となっています。
介護施設に入所したくてもできない高齢者が現状でも多く、在宅介護の負担が拡大されていることで家族への影響も大きくなっています。
公的年金で生活する方のうち、国民年金のみの受給者であれば、低価格で入所可能なのは特別養護老人ホーム・ケアハウス・サービス付高齢者向け住宅のいずれかに限られます。
しかし空きがなく入所もかなわない現状では、介護難民を増やすことになりかねないといえるでしょう。
安心・安全・低価格な介護施設が増え、家族の介護負担を軽減させることができる施設づくりが求められています。
人件費負担などで利用料を上げるしかない現状
そもそも有料老人ホームなどを利用するときの費用が高額になってしまうのは、その多くが人件費を占めるからといえます。
24時間体制で利用者に対してケアを行う民間の施設であり、地主に対する賃料なども必要となれば、利用料を高額にしなければ運営できなくなってしまうのでしょう。
介護を必要とする状態ではないけれど、いざというときに安心したいからという理由で老人ホームへの入所を希望する高齢者もいます。
しかし、人口減少傾向にあるのに対し高齢者の割合は大きくなっているため、介護スタッフを増やさない限りは限られた人材で施設を運営するのも限界があります。
国は介護施設の人材不足問題を重く見ており、在宅介護も推奨していますが、在宅で受けることができるケアも限られており家族の負担も増えます。
そのため、在宅介護に限界を感じている方や生活の質を向上させるために施設に入所したという方が、入所を希望するタイミングで受け入れることができる状況を作っていくことが必要といえるでしょう。
地域包括ケアシステムの構築が求められているものの…
厚生労働省では、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となりサービスとして提供される地域包括ケアシステムの構築を推奨しています。
日本は従来までは、核家族ではなく祖父母・親・子・孫などが同じ世帯で生活する大家族が主流でした。
隣近所も困ったときには助け合うといった風習がありましたが、現在では核家族化が進み、親と子は別世帯で生活することがほとんどです。
しかし高齢者が増えている今、住まい・介護・看護・食事などを地域ぐるみで提供できる体制を作り、地域で高齢者を支える仕組みが必要と考えられています。
現状打破には人材確保が急務
いずれにしても、今後増えている高齢者を支えていくには介護業界で働く人材を多く確保することが必要です。
そもそも介護現場で働く人や自宅で介護を続ける方に対する支援が不足しているのは、政策が進むスピードの遅さや政策自体がまとを得ていないからといった声もあります。
人材不足に加え介護報酬減額など、いろいろな面で厳しい現状にある介護サービス事業者が、安心して安定した介護施設運運営を可能とする仕組みづくりも求められているといえるでしょう。
そして自宅で介護を続ける家族にも、適切な情報が行き届いていないといった問題もあります。
実際に役所など自治体に相談できることも知らず、一人で介護を行い抱え込んでしまう方もいますし、費用をできるだけかけずにサービスを利用できる方法もあるのにそれを知らなかったため介護サービス利用を諦めてしまう方もいます。
その結果、介護難民や介護疲れといった問題を起こすこととなるため、介護で悩む方に適切な情報が行き届く体制づくりも必要といえます。