介護を必要とする方に対して行う「声かけ」はとても大切なことです。単に声をかければよいわけではなく、その方法次第では相手にストレスを感じさせてしまうこともあります。
しかし初めて介護現場で働く方は、利用者に対しどのような声かけが適切なのかわからないという場合もあるでしょう。
そこで、現場で介護を必要とする方と関わっていく上で、どのような声かけが望ましいのか解説していきます。
介護はあくまでも本人の自立を支えること
介護現場では、利用者に対する声かけがとても大切ですが、スムーズにいくこともあればうまくいかず互いにストレスを感じることもあります。
介護とは本人の自立を支えることのため、すべてを支援してしまえばできることまで奪う「親切すぎるのは不親切」になってしまうことを留意しておくことが必要です。
利用者で手指が思うように動かすことができず、食事をこぼしてしまう方もいるでしょう。このようなときには、利用者に代わって食べ物を口まで運ぶのではなく、ユニバーサルデザインのスプーンやお皿を使用し利用者本人に食事を取ってもらいあくまでも見守る姿勢が必要です。
他にもボタンを留めることができず、着替えが1人では難しいという方に対しても、代わりに留めるのではなくマジックテープに変え本人のみで着替えを可能とする工夫をしてください。
できることとできないこと、どこまでならできるのかを見極めながら、どうしても1人では難しい場合にサポートするにとどめておくべきといえます。
サポートの際の声かけも、利用者の言葉を否定したり命令口調になったり、決めつけや押し付けなどに該当する言葉は使わないことが大切です。
介護現場での声かけはとても大切
介護の現場で利用者に対する「声かけ」はとても大切ですが、たとえば介助のときに何も声をかけず突然利用者の体に触れれば、相手を驚かせてしまうことになります。
移乗・食事・入浴・排泄など、様々な介助を行うことが必要ですが、いずれのタイミングでも丁寧に声をかけることで利用者を驚かせることも不安にさせることを防ぐことができます。
これから何をされるのか?と身構えることもなく、安心して介護を受けようと任せてもらうことができます。
認知症の方への声かけで注意したいこと
高齢になると心身機能が低下し、そのバランスを崩すことで色々なストレスを感じやすくなっていることもあります。
声かけで相手の自尊心を傷つけるような言葉や、命令や否定など不快にさせる言葉を使ってしまうと、利用者とスタッフとの信頼関係は築くことができなくなるでしょう。
特に認知症の方に対しての声かけは注意して行うことが必要ですが、名前がおもいだせなかったり数分前のことも忘れてしまったりということも症状として出てきます。
さらに症状が進めば理解力の低下や不安感などが大きくなり、⼈を疑ってしまうことや介護そのものを拒否してしまう、または会話をしなくなるといった傾向も見られます。
そもそも認知症とは、脳が委縮してしまうことなどを原因とし、日常生活に支障をきたしている状態です。
その状態で日々生活している利用者は、いつも不安を抱えていることとなるため、安心して介護サービスを利用してもらえる声かけが必要と認識しておきましょう。
耳が遠くなっている方への声かけのポイント
高齢になると、音が聞き取りにくくなる老人性難聴になってしまうこともあります。
相手の声を聞き取りにくくなり、本人もつらさを感じ人と会話することも嫌になることもあるようです。そうなると周囲と交流することも避け、様々なことに対しての意欲も減退させることになります。
このような難聴の方に声かけをするときには、落ち着いた⼝調でゆっくりと話すようにしましょう。
もし声かけをしても反応がない場合でも、無視をされているのではなく⾳が聞き取りにくいからです。
特に⾼⾳域の聞き取りが難しくなる傾向があるため、少し低めの声ではっきりと話すことを心がけます。
できるだけ歯切れよく・わかりやすく・ゆっくり・丁寧を基本として声かけをすると、会話の内容を理解してもらいやすくなります。
できるだけ⽬線は同じ位置に合わせるようにすると、威圧感を与えることなく受け⼊れてもらいやすくなるかもしれません。
思いやりのある声かけで介護を
介護をサービスとして提供するには、介護スタッフだけが努力すればよいわけではなく、利用者との二人三脚で協力しあうことも必要です。
そのためには介護スタッフが利用者に信頼してもらうことが必要であり、忙しいからといって思いやりに欠ける言葉を発することなどは絶対に避けるべきといえます。
忙しいときこそ相手の気持ちに寄り添う声かけを行い、安心してもらえる対応を心掛けていきましょう。
二人三脚でスムーズに介助できるようになれば、利用者だけでなく介護スタッフの負担も軽減させることができるはずです。