高齢者や障がい者など日常生活を送る上で支援を必要とする方に対し、様々な形でサービスとしてそのサポートをするのが福祉・介護業界です。
その中で介護サービスでは、介護施設に入所しながら利用者がサービスを受ける施設サービスと、介護を必要とする方が自宅で生活しながら利用する居宅サービスに分けることができます。
そこで、介護業界の現状とこれから解決していかなければ問題にはどのようなことがあるのか、そのために必要なことは何なのか解説していきます。
介護サービスの種類
介護サービスは施設サービスと居宅サービスに分けることができますが、それぞれ次のような種類のサービスが含まれます。
施設サービスの種類
施設サービスに含まれるのは、特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)・介護老人保健施設・介護療養型医療施設(療養病床)の3施設があり、このうち介護療養型医療施設(療養病床)は介護医療院が新設されたことで2023年度末に廃止されます。
居宅サービスの種類
居宅サービスとして挙げられるのは、ホームヘルパーなど介護を必要とする方の自宅を訪問し食事や入浴など支援をする訪問介護、介護を必要とする方が施設に通い食事・入浴などのサービスを提供する通所介護などがあります。
近年では保険外サービスに注力する企業が増えている
高齢者を支える介護保険制度により、介護を必要と認定された要介護者は、自己負担を最小限に抑え介護サービスが受けることができます。
しかし日常の買い物の支援や家事・配食・高齢者の安否確認や見守りなどのサービスは介護保険を使って利用できません。これらの保険外サービスにかかる料金は、事業者ごとが独自で設定することが可能であるため、注力する企業は今後も増えつつあります。
他にも警備会社や建設会社、飲食業界など、様々な異業種業界から介護分野へと参入することも盛んに行われています。
高齢化進行により介護業界市場は拡大の見込み
日本は急速に高齢化が進んでいますが、すでに介護業界では慢性的な人手不足の状態です。
ますます高まる介護業界の人材需要拡大に対し、不足が懸念される介護人材をどのように補っていくのかが大きな課題ですが、政府も介護離職ゼロを目指し介護職員の待遇改善などを進めるといった取り組みを行っています。
介護業界でも人材不足と需給との差を埋めようと、スタッフの賃金引き上げ・昇給制度の設置・キャリアアップ支援など、福利厚生充実や待遇改善を進め定着率を高める動きも見られます。
介護と医療が連携してサービスを提供する動きも
介護業界と医療業界が連携する動きも見られますが、介護保険法に基づいた介護サービスは25種類。
その中で2012年に創設された「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」などは、訪問介護員と看護師が連携するものもあるなど、介護と医療が協力しながら関係を深めていきサービスを提供することもあります。
福祉・介護業界が抱える問題
第二次世界大戦終了後に生まれた世代は団塊の世代と呼ばれており、空前のベビーブームだった時代の方たちです。この団塊の世代が70歳を過ぎ、日本の高齢化はさらにスピードを加速させているといえます。
介護業界の人手不足は解消されず、今後、解決しなければならない問題は多く残されたままです。
問題を抱えながらも介護市場の急拡大が予測されていますが、その背景としてあるのが先に述べた異業種からの新規参入といえます。
医療と異なり異業種から参入しやすいことも特徴とし、損害保険会社・生命保険会社・大手スーパー・アパレルメーカー・飲食・建設・住宅・警備など様々な企業がその強みを活かし、介護業界へと参入しています。
ロボットの活用にも期待が高まるところ
介護現場では、利用者の身体を持ち上げたり支えたりなど、体力を必要とする業務も多くあります。
そのため、介護スタッフの体に装着することで、重いものを軽く持ち上げることが可能となるパワードスーツやパワーアシストスーツなどの研究も進められています。
他にも介護現場に介護ロボットを導入し、介護スタッフの業務にかかる負担を軽減する動きなども見られるようになりました。
人材不足解消に外国人技能実習制度の導入も
日本で介護業界へ希望する人材がいないのなら、発展途上国から外国人を実習生として迎え、技術や知識を学んでもらう外国人技能実習制度などの導入も人手不足解消への一歩といえます。
人材が定着するための働き方改革にも注目
福祉や介護業界の企業では、残業時間短縮や短時間労働なども組み込み、柔軟な働き方を可能とするといったことも行われています。
今後はさらに高齢者が増加することが見込まれているため、より人材の定着率向上に向けた取り組みなどが必要とされるでしょう。
ただ企業独自で行うことにも限界があるため、介護業界の人材不足問題への国の施策や取り組みが期待されるところといえます。