コラム

介護業界が抱える課題とその現状とは

少子高齢化が進む日本では「介護」へのニーズが高まる一方である中で、解決しなければならない様々な課題を抱えています。

 

たとえば深刻化する介護人材不足といった課題を解決するために、介護職員の待遇改善や現場への介護ロボット導入なども検討されていますが、実際にはその効果があらわれているとはいえません。

 

そもそも介護とは、心身機能が低下した方へ本人の尊厳を大切にしつつ、生活の質を維持・向上してもらう支援を行うことです。

 

生産性を大きく見出すことが難しい業界であり、介護保険など公的な仕組みも関係するため、費用を設定する上でも制限が設けられるなども考慮しなければなりません。

 

そこで、介護業界を取り巻く課題とその現状について考えてみましょう。

 

社会保障の財源は保険料収入と公費

社会保障の財源となるのは、人々から徴収した保険料による収入と公費です。

 

社会保障費は増大傾向にあるため、保険料収入だけでまかなうことは難しく、半分近くは公費で賄っているのが現状といえます。

 

今後、少子高齢化がさらに進めば医療・年金・介護などの社会保障費はさらに増大することとなります。

 

高度成長期のような経済的な成長は望めなくなった状況に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今後は税金と国の借金に頼らざるを得なくなっている状況です。

 

社会保障給付費は今後さらに増加傾向に

2040年はすべての団塊ジュニア世代が65歳以上になる年ですが、高齢化率は35.5%になると予測されています。

 

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になる2025年だけでなく、その子世代が高齢者になる2040年についても考えていかなければなりません。

 

さらに2065年になると、高齢者1人を現役世代1.3人が支えなければならないという予測さえあり、いずれ現役世代が高齢者世代を支えることができなくなり社会保障制度も崩壊してしまうのでは…と危惧する声さえきかれます。

 

単身世帯や夫婦のみの世帯が増加する可能性も

少子高齢化は今後さらに拡大し、経済や社会面から考えてもよい状況とはいえません。

 

経済に対しては労働人口減少による生産性の低下は避けることができず、会社員の給料の減額や貯蓄重視という傾向の高まりなどで、活性化は期待できなくなってしまいます。

 

社会保障費負担が増大すれば、生活水準も下がり日々の生活に重大な影響が及んでしまいます。

 

そして日本社会を担うこととなる20~30代の税金や保険料負担が増え、家計が圧迫されることは避けることができないといえるでしょう。

 

経済停滞に社会保障費に対する税金や保険料負担が重くなる中で、安心して子どもを産み育てることはできるのか…といった不安も大きくなり、増々単身者や夫婦のみの世帯が増えてしまう可能性も出てきます。

 

 

平均寿命上昇で社会保障費は増大傾向に

日本人の平均寿命は年々上昇傾向にあり、厚生労働省の「簡易生命表(令和元年)」でも2019年の日本人平均寿命は男性81.41歳、女性87.45歳という結果になっています。

 

1950年頃と比較するとその年数は20歳以上長くなっている状況で、医療技術の発達や栄養・衛生状態の向上により、将来はさらにのびるという予測です。

 

平均寿命が長くなることはよいことではありますが、健康な状態でいられる期間である健康寿命とは差があります。

 

平均寿命が健康な状態で生きていられる年数ではないため、平均寿命と健康寿命の間にある介護や医療ケアを必要とする期間を縮めていかなければ、今後も介護を必要とする高齢者は増加し社会保障費も大きくなってしまうでしょう。

 

介護難民が増え適切な介護が行き届かなくなる可能性大

介護難民とは、介護を必要とする状態であるのにも関わらず、適切な介護を受けることができない状況にある方を指しています。

 

高齢化が進んでいるのに、介護人材など担い手が不足していることで、今後は介護難民が増える可能性も考えられます。

 

そもそも高齢者に対する介護を担う若い世代の人口は減少傾向にあり、増え続ける高齢者に対応することは難しい状況です。

 

それに加え、賃金が見合わず長時間労働といった激務のイメージが高い介護業界で働きたいと志望する若い世代も少なくなり、介護難民を生んでしまう要因になっているとも考えられるでしょう。

 

 

特に東京やその近郊はその課題解決が重要に

特に東京近辺の一都三県ではこの介護問題という課題を解決しなければならなくなっていますが、これは高度経済成長期に東京都とその近郊へ地方から移り住んだ方たちが高齢化しているという背景が関係しています。

 

現在でも地方から東京やその近郊へと人が流れる状況は変化していませんので、地方で育った子が進学や就職を機に上京する東京一極集中により、さらに介護難民は増える可能性があります。

 

東京周辺の周辺県では介護施設が多く設けられているものの、周辺県そのものでも高齢化が進んでおり、東京都に住んでいる高齢者を受け入れる余裕もなくなっています。

 

今後は地方都市に向け、高齢者を受け入れる余力のある介護施設に支援してもらうことも必要となるのかもしれません。

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