介護現場では、普段日常生活であまり使わない言葉や用語がたびたび使われることがあり、はじめて介護業界で働く方などは混乱しがちです。
しかし介護記録への記載やケアプランに目を通す上で、知らない用語などがあれば介護ケアに支障をきたすこともありますので、具体的にどのような専門用語を使うことが多いのか把握しておきましょう。
介護現場で使うことが多い「トランス介助」という用語
「トランス」とは移動・転送を意味する用語である「transfer(トランスファー)」を省略した言葉です。
介護業界で用語として使われている「トランス介助」とは、ベッドから車椅子への移乗や車椅子からトイレの便器に移乗することなど、乗り移ることを意味しています。
利用者の足腰が弱くなっているときや、半身などマヒ状態にある場合には、この乗り移る動作で転倒や転落してしまうリスクも高くなるため、トランス介助が重要となります。
トランス介助を行う場合には、車椅子にストッパーをかけ利用者の安全に細心の注意を払うことが求められます。
介護スタッフ自身も、無理な体勢で腰に負担をかけないようにするなど、合理的に介助できるような方法を把握しておくことが必要です。
そこでトランス介助では、対象者にできるだけ近づき、足を開いた状態で立ち重心を低く保つことが基本の姿勢となります。
利用者の立ち上がりや座位に移す場合には、膝を使えば腰にかかる負担を軽減させることができます。
放置してはいけない「褥瘡」という用語があらわす状態とは?
「褥瘡(じょくそう)」とはわかりやすくいえば「床ずれ」のことであり、寝たきり状態の利用者の場合、一定部分に体重が長時間かかってしまうと背中や腰などの皮膚が赤くただれ傷を作ってしまう症状を指しています。
仰向け状態で横になっている方であれば、肩甲骨・背骨・仙骨周辺などにできやすく、横向き状態で寝た状態の方は腸骨・ひじ・膝などに注意が必要です。
もし寝返りを自分でできる方なら簡単に褥瘡ができることを防ぐことはできるでしょう。椅子に座っているときも、自分で座りなおせばよいだけです。
しかしこの体位変換が病気やケガなどで自由にできなくなっている方の場合、介護スタッフが一定時間ごとに変更しなければ、一部分だけが圧迫されることになり血流が滞ってしまいます。
その結果、酸素や栄養が廻らなくなるため褥瘡を発生させやすくなってしまうのです。
この褥瘡は細菌感染症・骨髄炎・敗血症といった重大な合併症を引き起こす可能性もあるため、体位交換はこまめに行うことが必要となります。
必要な基本動作を示す「ADL」という用語
「ADL」とは「日常生活動作(Activities of Daily Living)」を省略した用語であり、日常生活で必要となる基本動作を意味しています。
たとえば起床・衣服の着替え・食事・排せつ・入浴・就寝、そして移動などで必要となる動作です。
「IADL」という似た用語もありますが、これは「手段的日常生活動作(Instrumental Activity of Daily Living)」を省略した用語です。
基本的動作で行う複雑な日常動作のことであり、買い物・洗濯・電話・金銭や薬の管理・交通機関利用での外出などが該当します。
「ADL」は認知症のスクリーニングや介護認定など、身体活動能力や障害レベルを図る上での指標としてその評価が用いられます。
介護計画を意味する「ケアプラン」という用語
ケアプランとは介護計画のことであり、要支援や要介護認定を受けた高齢者が、適切な介護保険サービスを利用するために作成します。
どのような介護サービスをどの方法で受けることで生活の質を向上させることができるのか、利用者それぞれの心身状態や家族の状況なども踏まえた上で検討していかなければなりません。
様々なサービスを組み合わせた介護の計画書であり、利用者本人やその家族が作成することもできますが、給付限度額やサービスの種類・内容に詳しいケアマネジャーに依頼されることが一般的といえます。
ケアプランの作成で重要となる「アセスメント」という用語
介護サービスを提供するにあたり、利用者の生活環境や病状などを把握し、理解することは大切なことです。
利用者が何を求め、どのようなケアを必要としているのか課題を整理していくことが求められますが、これをアセスメントといいケアプランを作成する上でも重要となります。
利用者本人からだけでなく、その家族や診察した病院の医師や看護師などからも情報を収集し、もっとも適切といえる介護サービスを提供できるケアプランを作成することが必要です。
生活の質を指す「QOL」という用語
「QOL」は「クオリティ・オブ・ライフ(Quality Of Life)」を省略した用語で、生活の質を意味しています。
介護サービスを利用する高齢者が、身体的に不自由することなく精神面でも安心して暮らすことができるように、QOLを向上させ豊かな人生を送ってもらうケアを提供することが求められます。