衣服を着替えることは身体を清潔に保つことだけでなく、生活にリズムを整え快適に過ごすためにも大切なことです。
特に頸髄損傷の方などは、発汗や自律神経が麻痺しているため体温調節が難しく、暑さや寒さに反応しにくい状態です。
気温が高い日や外出時などには体温が上昇することで脱水症状なども起こしやすい反面、
寒い日には低体温症などに注意しておかなければなりません。
気温や活動に合わせた衣服を選び着用してもらうことが必要ですが、そのためにも着脱介助で注意しておかなければならないことを把握しておきましょう。
毎朝の着替えや入浴のときにも行う着脱介助
介護施設では、利用者が朝起きたときや入浴の際、衣服を交換する着脱介助を行います。
健康な方への介助はスムーズにできても、麻痺などがある方への介助は時間もかかってしまうだけでなく、コツを掴んでおかなければ難しいと感じてしまうこともあるようです。
そもそも高齢になれば身体機能が低下するものですが、自力で可能な方への着脱介助はできるだけ見守るようにし、できない部分をサポートするようにします。
あくまでも本人が自立することを目的として介助することが必要なので、麻痺などがある方に対しても片側が動くなら声かけしながら自身で動かしてもらうようにしましょう。
衣服の選び方の注意点
介護を必要とする方の衣服は、できるだけ肌触りや通気性・保湿性・吸湿性・耐久性がよく、皮膚への刺激が少ない素材のものを選びましょう。
そして着心地よく感じられるように、ゆったりとした動きやすいものがよいといえます。
ぴったりフィットしすぎるものは、着脱が難しいだけでなく身体を圧迫することもあり、皮膚を傷めてしまう原因になります。
着脱介助の具体的な方法は?
具体的に着脱介助の方法としてどのように実践していけばよいのか、それぞれ衣服などの種類によってご説明します。
上着の着脱介助
上着のうち、Tシャツやトレーナーなどを着用してもらうときには次のように着衣介助を行います。
①拘縮や痛みなどがある腕側から先に袖を通し、できるだけ肩まで通す
②頭を少し前に倒すようにしてもらい、服を通す
③もう一方の腕に袖を通す
④片手で要介護者の胸を支えておき、前屈体制になってもらい背中側の服を下ろす
⑤要介護者の前にまわって裾や腕周りを整える
これに対し、前がボタンやファスナーなどになっていて、開くタイプのシャツやジャージ、ジャケットなどを着用してもらうときには、次のように着衣介助を行いましょう。
①拘縮や痛みのある腕から袖を通す
②要介護者の上半身を片手で支え、反対側に袖を回す
③反対側の腕に袖を通す
④片手で要介護者の胸を支え、前屈体制になってもらい背中の服を下ろす
⑤要介護者の前にまわって袖や衣服を整える
着用ではなく脱衣する時には次のように介助します。
①片手で要介護者の上半身を支え、前屈体制になってもらい背中の部分を捲り上げる
②痛みのない腕側の肘を曲げてもらい、袖を抜く
③鼻に服を引っ掛けないよう注意しながら頭から衣服を抜く
④反対側の腕側の袖を抜く
パンツやズボンの着脱介助
パンツやズボンを着用してもらうときの着衣介助は次のように行います。
①要介護者の両足にパンツやズボンを通し、できるだけ臀部まで引き上げておく
②側臥位になってもらい、片側のパンツやズボンを腰まで上げ、衣服の中心を臀部の中央に合わせる
③要介護者の体の向きを反対にし、反対側のパンツやズボンを腰まで上げる
④仰臥位になってもらい、パンツやズボンの中心が体の中央に位置しているか、裾が下がっているか、ポケットの中袋の位置などを確認しながら整える
これに対し、パンツやズボンを脱ぐときの脱衣介助は次のように行います。
①側臥位になってもらい、パンツやズボンを下げる
②体を反対側に向けて反対側のパンツやズボンを下げる
③仰臥位になってもらいパンツやズボンを脱がせる
靴下や靴など足元の着衣介助
足元の靴下や靴などの着衣介助は次のように実践してください。
まず靴下の場合には、要介護者の足を入れてつま先部分を少し引っ張り、余裕をもたせます。爪が靴下の中で引っかかっていないか、指が曲がった状態になっていないか確認しておきましょう。
靴の場合には、履いてもらう前に指先を触って、指が曲がっていないか確認します。
足を入れた後で踵部分がズレていないか、つま先が曲がった状態になっていないか再度確認するようにしてください。
グローブや手袋など手に装着するものを着用するための介助
寒い季節はグローブや手袋などを手に装着することもあるでしょうが、この場合には次のように介助します。
①要介護者にグローブなど着用する側に平行に立つ
②紐がついているタイプのものは親指に紐を掛け、手のひら側にグローブをまわしてから指を入れる
③グローブに親指をしっかり入れ、手の甲側のマジックテープを留める
③手首側のマジックテープを留める