コラム

介護業界でも問題視されている「ワンオペ」による勤務とは?

ワンオペとは「ワンオペレーション」を省略した呼び方であり、介護施設などでも使われることがある言葉です。

 

近年、介護業界ではこのワンオペによる夜間勤務などが問題視されていますが、具体的にどのような状況を指しているのでしょう。

 

そこで、介護業界におけるワンオペによる夜勤や介護の問題点などをご説明します。

 

「ワンオペ」とは?

「ワンオペ」とは「ワンオペレーション」を略した言葉で、たとえば飲食店など1店舗を1人が担当することを意味しています。

 

主に早朝や深夜など、利用客が少ない時間帯などはコンビニエンスストアなども従業員が1人というケースもありますが、それをワンオペといいます。

 

「ワン=ひとり」・「オペレーション=作業」が合わさり「ワンオペレーション=単独作業」ということになりますが、1人で現場を担当するため労働環境の過酷さをあらわす意味で使われることもあります。

 

介護施設で問題となりやすい「ワンオペ夜勤」

2020年2月、日本医療労働組合連合会では介護施設の夜勤の実態を調査した結果を公表しています。

 

調査は2019年6月に全国143施設、4,194人のスタッフに対し実施したアンケート調査による結果ですが、それによると日勤・夜勤の2交代制でスタッフが勤務する施設は約87%となっており、夜勤業務が16時間以上ある施設は約72.3%でした。

 

介護施設の勤務体制は2交代制だけでなく3交代制というケースもありますが、ほとんどの施設が2交代制です。

 

2交代制と3交代制では働き方に次のような違いが出てきます。

 

 

2交代制の場合

 

2交代制の場合の勤務時間は、たとえば朝9時から17時まで8時間勤務するスタッフと、17時から翌朝9時まで16時間勤務するスタッフがいるという形で、夜勤は16時間勤務になるため休憩時間を間で2時間取るなどです。

 

夜勤明けの翌日は公休となりますが、夜勤によりワンフロアをワンオペで担当することになれば、長時間に渡り様々な対応を強いられることになります。

 

 

3交代制の場合

 

3交代制の場合の勤務時間は、早番・遅番・夜勤という時間帯に分かれるため、たとえば朝6時から14時までのスタッフと、14時から夜22時までのスタッフ、さらに夜22時から翌朝6時のスタッフが交代で勤務する形が多いようです。

 

1回の勤務時間が短いため、スタッフの体力面での負担は軽減できますが、夜勤明け当日が公休となるため丸1日休むことができる日が少なくなってしまうのはデメリットといえます。

 

 

なぜ介護施設ではワンオペ夜勤が多くなっている?

そもそも介護施設は利用者の介護ケアを行うだけでなく、生命を預かる仕事でもあるため特に夜勤などは緊張感が伴い、ワンオペによる勤務ではスタッフの負担も大きくなってしまいます。

 

介護施設で夜勤を担当する場合、利用者が就寝するまでの介護の他、就寝後に定期的に巡回を行い、ナースコールなどで呼び出しがあれば対応もします。

 

就寝後もトイレ介助や体調不良を訴える利用者に対応しなければならず、夜勤で設定された2時間の休憩も十分に取ることができる状態とはいえません。

 

一般的には利用者が就寝している間に休憩や仮眠を取りながら交代で働くことが多いですが、ワンフロアを1人が担当すると心身ともに緊張感が抜けない状態が続いてしまいます。

 

 

ワンオペが増えている理由

 

介護施設でワンオペによる勤務が多くなっているその背景には、介護業界そのものの人手不足が関係しています。

 

離職率が高い上に人を雇っても定着せず、常に人手が不足しているため、夜勤もスタッフが1人で担当しなければならないといった状況を作っているようです。

 

この介護業界の慢性的な人手不足は今後も解消されるとは言い切れない中、高齢者の数はどんどん増えているためこのままでは介護崩壊が起きかねません。

 

勤続年数3年未満で離職してしまうスタッフは全体の約6割いるとされているため、スタッフの定着率を上げるため介護事業所側が様々な努力をしなければならないときが来ているといえます。

 

夜勤のワンオペで高まる健康リスクへの配慮が重要に

夜勤はスタッフにかかる業務の負担も大きく、ミスがあれば重大な事故につながる可能性もあります。

 

介護施設は24時間稼働し続けるため、利用者に対する介護も常に行うことができる体制を作っておかなければなりません。

 

しかし夜勤は十分に休憩が取れず、常に緊張感のある状態で仕事をすることになるため、介護スタッフの健康リスクも大きくなりやすいといえます。

 

ワンオペではなく業務を分散させ、現場で働くスタッフの身体的・精神的な負担を軽減させることが重要となるでしょう。

 

介護施設の中には、夜勤に手当を付与するなど収入面でメリットを感じられるよう工夫しているケースもあります。

 

収入以外にも福利厚生を充実させ、働きやすい職場環境で勤務できるようにするなど、介護は魅力ある現場だと感じられる取り組みや工夫が求められるといえます。それには介護事業所だけでなく、国の思い切った対策なども必要と考えられるでしょう。

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