介護施設で働いていると、利用者に対しどのような言葉で声掛けをすればよいかわからないときもあるでしょう。
たとえば「帰りたい」と利用者に言われてしまったときや、認知症の方から間違ったことを主張されたときなど、どのようにコミュニケーションを取ればよいか迷ってしまうものです。
実際にはどれが正解という答えはなく、利用者ごとに合わせて臨機応変に対応していくことが必要になります。
その中で、使ってはいけない言葉もありますので、具体的にどのような内容のことなのか把握しておきましょう。
利用者に対し使ってはいけない言葉とは?
介護施設の利用者は高齢者ですので、介護スタッフよりも目上の方がほとんどです。たとえ年齢がそれほど変わらない方がいたとしても、子ども扱いするような言葉やあやすような口調は相手に失礼にあたります。
また、長く関わっている利用者だからといって、親しみを込めてタメ口を使うことや強い口調や命令口調で話すこともタブーです。
若い世代の方などは、流行り言葉や略語をつい使ってしまいがちですが、利用者には伝わりにくいため使ってはいけない言葉と認識しておいてください。
何かを相手に伝えることは、相手に伝わる努力が必要ですので、わかりやすい言葉を使うようにしましょう。
認知症の方に使ってはいけない言葉とは?
認知症の方が信じていることや、見えていると主張する者に対し、それは間違っている・そんなものはないなど否定する言葉は使ってはいけません。
たとえ事実と違うことを主張されている場合でも、認知症の方にとってはそれが真実なのです。否定されてしまえば気持ちの行き場を失い、激しい怒りや喪失感につながってしまいます。まずは本人の世界を受け入れながら、相手に寄り添って会話をするようにしましょう。
また、食事やトイレなど時間がかかる場合もあるでしょうが、急がせるような言葉は使ってはいけません。時間がかかっているときには相手の了承を得て、サポートするようにしてください。
相手をバカにする言葉はNG
認知症の方は集中力が低下していることもあれば、モノの位置など認識しにくくなっていることもあります。
仮にトイレで失敗してしまったときなど、バカにしたりミスを非難したりする言葉は相手を傷つけるだけでなく、信頼関係を壊すことになってしまいます。
何度も同じ失敗を繰り返してしまう場合には、やり方を短い言葉でリピートしながら伝えることや、絵やジェスチャーなどで伝えるなど工夫をしてみましょう。
認知症だから伝えても理解できないと決めつけ、本人が目の前にいるのに存在を無視し、職員同士でやりとりをするといった行為もNGです。
たとえば利用者に何も伝えず突然車いすを動かすといった行為も、相手をモノ扱いする失礼なことだと認識しておいてください。
自分で行動しようという意欲を低下させるだけでなく、スタッフに対し不信感を持たれることになります。
認知症の方が得意とすることは率先してやってもらうとよい
認知症の方は本来なら簡単にできたことでも、今はスムーズにできなくなっていることもあります。
ただ、スムーズにできないからと一方的に排除してしまえば、自分は何もできないお荷物な存在だと精神的に不安定になる可能性もあるでしょう。
仮に段取りや計画どおりに行うことは苦手だとしても、昔から続けていたことや趣味でやっていたことなど得意なこともあるはずです。
認知症の方は物忘れや失敗に対し不安に感じていることも多いので、できないことを無理にしてもらおうとせず、できることや得意なことをしてもらったほうが自信を取り戻すきっかけにもなると考えられます。
高齢者や認知症の方に対し否定する言葉は基本NG!
高齢者や認知症の方は、本人の思いや行動を否定されることを嫌います。もしも本人は正しいと思っていることを頭から否定されてしまえば、動揺してしまい孤独を感じることとなるでしょう。また、介護スタッフが若い世代であれば、高齢者のプライドも大きく傷つけることになってしまいます。
本人が傷ついたり孤独を感じたりするだけにとどまらず、身近な人に怒りをぶつけ暴言を吐くことになってしまう可能性もあれば、つらい環境から逃げだそうと徘徊してしまうといった症状が出てしまうことも考えられます。
他にも不用意に励ますことや、本人を無視して職員同士のみで会話をするなども、認知症の方との信頼関係を壊す行為です。
使ってはいけない言葉は排除し、正しく接しながら信頼関係を着実につくっていきましょう。
信頼を得ることができれば、ケアもスムーズに行うことができるでしょうし、介護スタッフ自身も仕事にやりがいや楽しさを感じられるようになるはずです。
もし自分が高齢者や認知症だったら…と想像しながら、相手に対し思いやりを持って接することができる言葉を使うようにしてください。