親の介護が必要となり、親の面倒は子が看るものだから…と仕事を辞めて実家にもどる「Uターン介護」。
親にとっても子にとっても、親子が一緒に過ごす時間ができるなどメリットがあるように感じられますが、実際にはよいことばかりではありません。
このようなときにこそ、在宅介護サービスの利用や介護施設への入所を検討してほしいところですが、ではなぜUターン介護はメリットばかりではないのか、その理由をご説明します。
Uターン介護は親と子にとって最善の選択か
都会に働きに出ていたものの、田舎で暮らす親が介護を必要とする状態となり、会社を辞めて実家に戻るという「Uターン介護」を経験する方もいるようです。
退職した当初は失業保険の受給が可能ですが、一定期間を過ぎれば終了します。そして地方で再就職を考えても、親が介護を必要とする年齢であれば、子も40代や50代。
希望する仕事がすぐに見つかるとは言い切れず、正社員ではなくアルバイトで働かなければならなくなる可能性もあります。
介護Uターンはそれまでの職を失うことになるのはもちろん、子が帰ってきたことに喜んでいた親も、たとえば子の配偶者との関係がうまくいかず喜びは長続きしないケースもあり家庭が険悪な雰囲気になることもあるようです。
なぜUターン介護で家庭に不和が?
親のためを思いUターン介護を決断したのに、結果として家庭に不和が生まれ失敗してしまうケースもあります。
その理由として挙げられるのは、
- 経済的な苦しさなどによる家庭不和
- 親ができることまで奪う
- 同居したことでサービス利用に制限が出る
といったことです。
経済的な苦しさなどによる家庭不和とは?
介護離職後に親のいる実家に戻った場合でも、すぐに正社員として再就職できると安易に考えてしまうことで、次の仕事が見つからず経済的に苦しくなることもあります。
親の介護を前提として再就職先を探すことになるため、自宅から近距離で残業なしといったニーズを満たさなければなりません。
しかし地方は都会よりも求人も多くないため、希望する職種や条件に合う条件の求人に巡り合えるとは限らないのです。
失業保険の給付もあっという間に終わり、収入が少ない状態では経済的に苦しくなってしまいます。
親のできることまで奪ってしまう?
家庭不和の中で、親が迷惑にならないように自分では動かないようにしようと考えてしまうと、本来持っている機能も奪われてしまいます。
親の介護はすべて代わりにしてあげることではなく、残った機能を維持・向上させることが必要です。無理にすべて代わりにしてあげるようになれば、身体能力を低下させてしまいます。
介護の現場でも利用者が安全に行動できる環境を整え見守ることが必要であるように、自宅介護でも同様のことがいえるでしょう。
同居したことでサービス利用に制限が?
親が一人で生活していたときには、介護保険サービスを使い週に2度、掃除や食事などのホームヘルプサービスの利用が可能でした。
しかし家事援助サービスは独居や高齢者のみの世帯に設けられているため、子夫婦が同居することにより利用はできなくなります。
親にとってホームヘルパーとの食事の準備や買い物に行くことが気分転換になっていた場合、何もせずテレビを見て過ごすといった状況ではだんだんと介護状態も悪化してしまうでしょう。何よりも親の精神的なストレスなどが解消できません。
特別養護老人ホームへの入所も不利に?
介護施設の中でも、特別養護老人ホームは介護保険を使い、費用を安く抑えて入所できることから人気があります。入所可能となるのは申し込みをした順番ではなく、入所の必要性の高さや緊急性の高さなどで判断されることが特徴です。
もし将来、特別養護老人ホームへの入所を希望している場合も、子がUターンしたことで家族が身近に居ることとなり、入所の優先順位は下がってしまいます。
Uターン介護は親のためにならないこともある
このように、親のためを思ってUターン介護をしたのに、結果として親のためにならなかったというケースはめずらしいことではないといえます。
そのため地方で生活する親の介護が必要になったときには、担当のケアマネジャーとよく相談してもらい、日中はデイサービスなどの利用を検討することも視野に入れましょう。
日本は長寿化が進んでいるため、親の介護をいつまで続けなければならないかわかりません。親の介護をする年代は40代や50代ですが、まだ人生の折り返し地点といえる年齢で、今後さらに親の介護度が重くなってしまうと正社員として働くことがさらに難しくなる可能性が出てきます。
経済的にも負担が重くなり、十分満足できる生活を送ることができなければ、介護者のストレスも溜まっていきます。
ストレスで爆発してしまいそうな子に介護されるよりは、介護を専門としるプロに任せたほうが親のためになることもあるのです。
もしUターン介護を検討している方がいるのなら、親と子、それぞれがどのように生活することが最もよい選択なのか介護の計画も踏まえて検討することが必要と伝えてあげるべきでしょう。