介護施設で利用者に提供するのが介護食ですが、特別な食事ではなく年齢を重ねることによって変化する身体に対応できる食事のことです。
たとえば噛みやすいようにするなど食べやすさを工夫したり、唾液が少なくなっても水分を補えるようにしたり、さらに香りや形状、彩りなどで食欲を促進させるといったことを行います。
介護食を提供する目的
高齢により噛む力が低下していても、最初から細かく刻まれていれば噛み砕くことができます。下でつぶすことができるほど柔らかくすることや、飲み込む力が弱くなっているのならトロミをつけておくことなども必要です。
しかしそのような工夫が施された食事では、見た目が一般的な食事と異なり、食欲をそそらないという場合もあるでしょう。
この場合、彩りや香り、盛り付け、形状などを工夫することで、視覚や嗅覚を刺激し五感を使って食べることができます。食欲が低下し、低栄養となることを防ぐためにも必要なことです。
このように、弱まった機能を補うための食事を介護食といいます。
食事の形状だけでなく、生活習慣病を伴う時や、糖尿病や腎臓病などの場合には疾患に対応できる食事を提供することが必要となるでしょう。
いずれにしても、低下した食べる機能でもおいしさを感じ、味わうことができることを目的としています。
介護施設で提供する食事の種類
介護食とは通常の食事をより食べやすく工夫した食事ですが、具体的に次のような内容の食事を指しています。
①刻み食
通常の食事を2~3ミリ程度に細かく刻んだ食事で、飲み込む力はあるものの噛む能力が低下している方向けの食事です。口の中でまとまりやすく、飲み込みやすくするためにとろみをつけることもあります。
②やわらか食(ソフト食)
食材がやわらかくなるまで充分に煮込む、またはミキサーにかけて固めた食事です。舌や歯茎でつぶすことができるやわらかさなので、噛む力が低下している場合や飲み込む力が弱い場合でも安心して食事を取ることができます。
③ミキサー食(流動食)
食材をミキサーにかけ、ポタージュや液体状にした食事です。噛む力も飲み込む力もかなり低下している方に適しており、飲み込もうとしなくても喉の奥に流れやすいことが特徴です。ただ、誤嚥につながりやすいため、粘度には注意するようにしましょう。
④ゼリー食(嚥下食)
通常の食事ややわらか食をミキサーにかけ、ペースト状にしてゼラチン・寒天・でんぷんなどでゼリー状にした食事です。
飲み込む力が低下しているなど、嚥下機能が重度に悪化している方に適した食事といえます。
高齢化が低下しやすい嚥下機能とは?
嚥下とは飲食物を飲み込むことですが、本来であれば口の中に食べ物を入れると、細かくかみ砕かれた後にまとめられ、飲み込んで胃に送り込みます。
しかし高齢になればこの嚥下機能が低下することもあり、喉に残った食べ物が気管に入ってしまうこともあります。
これを誤嚥といいますが、誤嚥性肺炎などを引き起こす生命にかかわる事故につながることもあるため、十分注意してください。
食事は介護施設での楽しみの1つ
介護施設で提供する食事は、高齢者の機能によってケアが必要です。
もし水分を摂りたがらないのなら、お茶をゼリー状にすることや、水で作ったゼリーに黒蜜をかけおやつのように提供するといった工夫も必要となるでしょう。
食べ物は生きていく上でのエネルギー源となるものであり、栄養摂取を目的とするだけでなく日々の暮らしに満足感を与えてくれるものでもあります。
特に介護施設で暮らす利用者にとっては、食事は楽しみの1つです。見た目を華やかにしたり食欲をそそる香りをつけたり、食べたいと感じてもらえる様々な工夫を行っていきましょう。
また、栄養不足に陥りやすい高齢者のために、食事全体のバランスを考えて不足しがちな栄養をたくさん含む食材を使うことも忘れないことが大切です。特にカルシウムやたんぱく質、食物繊維、ビタミンなどは不足傾向にあるため、献立に取り入れるように工夫してください。
新たな概念の介護食とは?
これまでの介護食に、さらに利用者のニーズを反映したものがスマイルケア食です。
介護食がさらに普及することを目指して、農林水産省が提案する新たな介護食を総称してスマイルケア食と呼んでいます。
介護食は利用者の噛む力や飲み込む力に合わせて、安全に食べることを目的として提供されます。
それに加え、先に述べたとおり見た目や味付けなどにもこだわった食事を目指すことがスマイルケア食といいます。
利用者の多様な好みに対応することで、これまで介護食を食べなかった方でも食事を楽しみにするようになった例も報告されています。
食欲増進と栄養摂取改善という効果が期待されるため、安全さを重視した介護食にもうひと工夫加え、楽しく食事ができるスマイルケア食の提供を目指していきましょう。