介護を必要とする方が家族にいる場合、介護者で悩みを抱えやすいのが腰痛についてです。介護施設で働く介護スタッフの中にも、腰に負担の大きな動作により、腰痛で苦しんでいる方は少なくありません。
安心して家族の介護を行うため、介護スタッフが仕事を安心して続けていく上でも、介護における腰痛を予防する方法などを知っておきましょう。
介護と腰痛は背中合わせの関係?
介護を行うことは腰痛につながりやすいといわれていますが、厚生労働省が公表している「介護業務で働く人のための腰痛予防のポイントとエクササイズ」でも業務上疾病の発生件数の6 割以上を腰痛が占めているようです。
職業別で見た場合、介護業務を含む保健衛生業が2~3割を占めている結果となっているため、腰に負担のかかる動きをすることが多いため腰痛を抱えていると考えられるでしょう。
腰痛になりやすい介護現場での主な業務の種類
特に要介護者の移乗介助や、排せつ(トイレ)・入浴介助の際には、前傾姿勢や中腰になることが多く、腰をひねる動作が必要です。
腰をかがめた状態になることが多いため、腰痛になりやすい環境にあるといえるでしょう。
移乗介助
要介護者を、たとえばベッドから車いすへ、車いすからトイレの便座へなど、移動させるためのサポートが移乗介助です。
要介護者の腰や膝などを支えたり抱えたりしながら移乗させるため、無理な姿勢を取り続けると腰を痛める原因になると留意しておきましょう。
入浴介助
単独での入浴が難しい要介護者の入浴をサポートするのが入浴介助です。浴槽への移動や要介護者の頭や背中を洗い拭く作業の際には、要介護者の身体を支えることもかがんで低い姿勢を保つことも多く、腰に負担がかかりやすくなってしまいます。
排せつ(トイレ)介助
車いすからトイレの便座への移乗や、直接要介護者のズボンを上げ下ろし、陰部を拭くといった作業が排せつ介助です。
移乗の時には要介護者の身体を支えなければなりませんし、衣服の着脱で中腰になるなど、腰への負担は発生しやすいといえるでしょう。
おむつの交換
要介護度が進めばトイレでの排せつが難しくなり、おむつを使用する要介護者もいます。この場合、要介護者のズボンや下着を脱がせ、陰部の洗浄しおむつを交換することが必要です。
要介護者が寝たままの状態で行うため、前傾姿勢で15分程度、介護を行うことが必要となり腰への負担が大きくなるのは言うまでもありません。
体位交換
寝たきりで自分で寝返りをうつことの難しい要介護者に対しては、床ずれなどを防ぐために定期的に体位を変えることが必要です。
その際、仰向けで寝ている要介護者の肩や太ももの下から腕を入れ、横向きの姿勢に変えるといったことが行われます。前傾姿勢や中腰で行わなければならず、腰痛になりやすいといえるでしょう。
更衣介助
自分で着替えを行うことが難しい要介護者には、衣服の着脱のサポートを行います。
寝た状態のままで行う場合、腰をひねり中腰になる動作が増え、時間もかかることから腰に負担がかりやすくなるといえるでしょう。
腰痛を予防するために
腰痛にならずに安心して介護を行うためには、腰への負担をとにかく減らす工夫が必要です。そこで具体的に、どのような方法で腰痛を防げばよいのかご説明します。
腰を曲げずに落とす感覚で
介護を行う時、腰を曲げかがむという姿勢を保とうとせずに、身体の重心を低めに落とすことを意識しましょう。足をしっかり開き腰を落とす姿勢により、安全性も保たれます。
持ち上げようとせずにスライドさせる
移乗の時には要介護者を持ち上げようとしがちですが、腰に負担がかかるだけでなく転倒などのリスクも高めます。
そこで、車いすとベッドを近づけて持ち上げようとせず、ボードなど福祉用具を使いスライドさせればスムーズに移乗が可能となり腰も痛みが発生しにくくなります。
できる限りのことは自分で
要介護者のすべてをサポートしようとせずに、自分でできることは本人にやってもらうことも大切です。介護者の負担も軽減されますし、なによりも要介護者本人が自立することを支援できます。
ただ、能力以上のことを無理にさせることは禁物なので、心身の状況に応じて検討していきましょう。
便利なグッズもうまく活用する
たとえば腰をサポートしてくれる腰痛ベルトや、骨盤を正しい位置に保ってくれる骨盤ベルトなど、腰痛の症状を緩和させてくれる便利なグッズもうまく活用しましょう。
介護の負担を軽減させる福祉用具を活用すると、より負担を軽くできますし、要介護者も安心して介護を受けやすくなります。
時にはエクササイズも必要
腰周辺の筋肉をほぐし血行を促進させる簡単なエクササイズや体操を行うことも必要です。
腰痛予防の効果が期待できますし、いつも同じ姿勢では身体を動かすことができませんので、全身の柔軟性を高めるためにも行っていきましょう。