介護を必要とする方たちが暮らす介護施設では、高齢者にこまめに水分補給してもらうことがとても大切です。
高齢の方は体の感覚が鈍いため、喉の渇きを感じる神経が減退してしまいますし、水分を蓄える力も弱くなります。
そのため脱水などの症状にならないためにも、水分補給をこまめに行ってもらうように介護スタッフは注意しなければなりません。
しかし介護施設で生活するすべての高齢者が自分で水分補給を可能とするわけではなく、中には声掛けが必要な場合もあれば意思疎通が難しい方もいます。他にも寝たきり状態の方もいるので、介護現場で過ごす高齢者の状況に合わせて水分を補給してもらうような対応が必要です。
介護施設で水分補給を行うことの大切さ
高齢者は若い世代の方と比べると、体内に水分を留めておく機能が低めです。
小児の人体に占める水分量の割合は70~80%ですが、それが成人になると60%、高齢者の場合は50%まで減少します。水分を蓄える筋肉の量も減少してしまう高齢者は、脱水を起こさないためにも意識して水分を摂ることを心掛けなければなりません。
さらに高齢者は、水分を蓄えておく機能も低下するだけでなく、腎臓機能も低下するため尿量が多い頻尿の方が増えます。
血圧の高い方などは降圧剤(血圧降下剤)を使用しているため、利尿作用で尿量が増えることもあります。夜間にトイレに行きたくなることを防ぐため、水分をわざと制限し摂らないようにする高齢者もいますので注意が必要です。
高齢になれば体の感覚が鈍くなるため、喉の渇きを感じる口渇中枢の機能も低下し、本当は体が水分を欲しがっているのに気がつかないこともありますので、介護スタッフは十分注意をはらっておくことが必要となります。
高齢者にとってどのくらいの水分が必要?
高齢者は脱水症状のリスクが高く、仮に脱水になれば回復するまで時間がかかってしまいます。
生命にも影響を及ぼす可能性があるため、1日に必要な水分量を適切に摂ることができる状況を作っておくようにしましょう。
一般的に1日に必要となる水分量は2~2.5リットルですが、すべてを飲み水で摂らなければならないわけではありません。
必要な水分量のうち、半分は食事や果物など補食でまかなうことができますので、残りの半分を飲み水で補給したほうがよいと認識しておきましょう。
そのためにも食事でどのくらいの量を食べたのか、飲んだ水の量など記録を残しておくことも大切です。
水分が不足するとどのような状態になる?
高齢者が摂る水分量が不足している時や、反対に摂りすぎている時にはどのような心身状態になるのか把握しておきましょう。
①軽度に水分が不足している時の症状
- 口が渇く
- 舌や唇、皮膚などが乾燥する
- 尿量が減少する
- ぼんやりする
- めまいが起きる
②中度に水分が不足している時の症状
- 頭痛がする
- 全身脱力感や倦怠感がある
- 手足がふるえる
- ふらつく
- 発熱や皮膚に紅潮が見られる
- 血圧が低下する
③重度に水分が不足している時の症状
- 幻覚や昏睡、錯覚といった精神症状が見られる
- 痙攣や呼吸困難、意識障害など
- 目にくぼみができる
④水分を摂り過ぎている時の症状
- 身体がむくむ
- 下痢を起こす
- 動悸や息切れが起きる
- 頻尿になる
- 血圧が上昇する
- めまいが起きる
- 倦怠感がある
- 不整脈が見られる
- 冷えや体重増加など
介護における水分補給の注意点
介護施設で高齢者に安全な状態で水分を補給してもらうためには、主に次のことに注意して実施するようにしましょう。
水分を補給する時の体勢
高齢者の補給介助の際、のけぞった体勢では誤って気管に水が流れ込んでしまう可能性もあります。そのため前傾姿勢を意識し、寝たきり状態の方はベッドの頭部をあげるようにしてください。
補給する水分の種類
補給する水分は、麦茶などカフェインを含んでいない飲み物がよいでしょう。
投薬の方は副作用なども心配なため、コーヒーや緑茶などカフェインを含む飲料の摂取量は注意が必要です。また、カフェインには利尿作用があるため、体の中の水分が排出されやすいことも知っておいてください。
また、夏場は冷たい飲み物のほうが気持ちがよいですが、胃腸へ強い刺激を与えることを避けるためにも、常温または40度程度に冷ました白湯のほうが好ましいといえます。
嚥下障害がある高齢者の水分補給の方法
のどや舌の老化により、嚥下機能が低下し飲み込みが上手にできないこともあります。
液状の水分を摂りにくい場合などは、トロミをつけたりゼリー状にしたりという工夫も必要です。
水分補給したがらない高齢者への対応方法
水分を摂ることを嫌がる高齢者がいる場合などは、なぜ嫌がっているのか理由を探ることからはじめましょう。
不安部分を解消できる策を見つけ、水分を摂る大切さを理解してもらうことが必要です。
無理強いするのではなく、ティータイムやおやつの時間などをうまく活用し、ゼリーや果物など比較的水分量の多いおやつを提供してみるなど工夫してみましょう。
まとめ
高齢者は脱水状態に陥りやすいことを理解し、本人から求められなくてもこまめな水分補給を心掛けるようにしましょう。
補給介助の際には前傾姿勢を基本とし、高齢者の状態に合わせ液状やトロミをつけたもの、またはゼリー状などのものを提供する工夫も行ってください。