新型コロナウイルス感染症へのリスクが懸念される中、介護現場でもウイルスが伝播する経路として挙げられる空気感染・飛沫感染・接触感染に注意が必要です。
日常からマスクの着用やうがい・手洗いを徹底して行い、空気中を浮遊する飛沫核を避けることや病原体に触れたり吸い込んだりすることを防ぐ必要があります。
感染者の皮膚や粘膜などに触れれば感染してしまう可能性がありますし、感染者が使ったドアノブや食器などから感染してしまうことも考えられます。
そのため介護現場で新型コロナウイルスなどへの感染を最小限に食い止めるため、手指衛生を徹底し感染経路を遮断していきましょう。
手洗いにも種類がある
医療関連感染を防ぐための重要な手段として知られているのが「手洗い」です。
医療関連感染は手を介し伝播されることが多いので、感染対策の基本中の基本といえるのが手洗いであると認識しておくべきでしょう。
手洗いの方法はそれぞれの目的に応じ、日常手洗い・衛生的手洗い・手術時手洗いという種類に分けられます。
日常手洗いは流水と石けんを使い、手指に付着した汚れや通過菌の一部を除去することを目的に行います。たとえば食事する前やトイレに行った後などに、日常的に行う手洗いが該当します。
衛生的手洗いは、単に汚れを落とすことを目的とせず、通過菌を除去することが目的です。医療現場や介護現場で働く従事者が、医療行為や介護を行う前後に行う手洗いのことを指しています。
そして手術時手洗いは、手術を行う時の手指の消毒を目的としているので、通過菌除去と常在菌を減少させること、増殖を抑制するために行います。
介護を行う前後に徹底して実施することを必要とするのは、これらの手洗いのうち衛生的手洗いです。
手洗いを行うタイミングは?
新型コロナウイルスなどへの感染対策には手洗いや手指消毒が重要だとわかっていても、どのようなタイミングで行うべきかわからない方もいるでしょう。
単に手洗いや手指の消毒を行うのではなく、必要とするタイミングで確実に衛生を維持することが必要です。
WHO(世界保健機関)が公表している患者ケアにおける手指衛生のタイミングは、
- 利用者に触れる前
- 清潔無菌操作の前
- 体液などに触れた可能性のある時
- 利用者に触れた後
- 利用者周辺の物に触れた後
としていますので参考にしましょう。
具体的な手指衛生の方法は?
手指衛生は、目に見えている汚れがあれば流水と石けんを使って15秒以上、目に見える汚れが付着していないのならアルコール消毒剤などで15秒以上を除菌しましょう。
目に見える汚れがない場合でも、嘔吐物や排泄物による汚染の可能性がある場合や、消毒薬への抵抗性が強い芽胞形成菌など微生物が対象の場合には、アルコール消毒剤だけでなく流水と石けんで除去することを行ってください。
1人で手洗いすることが難しい利用者に対して、手洗い介助を行う場合もあるでしょう。
利用者同士での感染拡大を防止するためにも、食事の前後やトイレの後などには流水と石けんを使い日常的な手洗いを行うことが必要です。
手洗い場まで移動可能な利用者については、介護スタッフが介助しながら手洗いを行うとよいでしょう。移動が困難であればアルコール手指消毒剤や除菌用のウェットティッシュを使ってしっかり手指の衛生を保ちましょう。
手荒れは感染リスクを高める?
アルコール消毒などは特に、回数が増えれば手荒れを起こすリスクを高めます。
しかし手荒れは皮膚に付いた細菌数を増やすこととなるので、接触感染のリスクを高めてしまう点に注意しましょう。
手が乾燥やひび割れなどを起こしている場合、皮膚のバリア機能も低下してしまいますし、常態化すれば皮膚にバイオフィルムが形成され殺菌・消毒効果を阻害することになるでしょう。
その結果、手洗いをしっかり行ったのに細菌が残った状態となってしまいます。
そのため手洗いによる感染対策を行うのと同時に、手荒れ対策も重要であると留意しておくべきといえるでしょう。
手荒れを防ぐために実践したいこと
手荒れを起こしてしまう原因は、度重なる手洗いや手指の消毒、気象の条件などです。
肌に合わない石けんや消毒剤の使用なども手荒れの原因になりやすいですし、温度の高いお湯で洗えば肌が乾燥してしまいます。
そのため手洗いに使用する石鹸や手指消毒用のアルコール消毒剤の種類、手洗いを行う際の水温などにも注意するようにしましょう。
具体的に手荒れ防止対策として考えられるのは、
- 皮膚保護成分を含んだ製品を選ぶようにする
- 使用する方に合った手洗い剤や手指消毒剤を選ぶようにする
- パウダーフリーやラテックスフリーなど低刺激性の手袋を有効に活用する
- 温水は使用せずに手洗いをする
- ペーパータオルの品質や水分の拭き取り方に注意をする
- ハンドケア剤を使って手入れも忘れず行う
などです。
手指の清潔な状態を保つことはとても大切ですが、それ以上に手荒れを起こさないことも大切であるとそれぞれの介護スタッフが認識しておくようにしてください。