コラム

介護施設にもマスクは優先して配布される?新型コロナに対する不安は増大

新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れる感染症指定医療機関以外にも、院内感染や施設内感染が発生してしまった医療機関や介護施設などに優先してマスクや防護服を配布すると厚生労働省は示しています。

 

介護施設については、新型コロナウイルスの感染者が発生してもサービスを続けることが求められる施設などを対象としています。

 

不足するマスクは医療機関や介護施設には優先して配布?

2020年5月14日、厚生労働省は医療機関向けマスクについて、新型コロナウイルス感染者を受け入れている医療機関などを優先して配布すると示しました。

 

介護施設もその対象ではありますが、感染者が発生してもなおサービスを継続することが求められている施設とされています。

 

新型コロナウイルス感染症の影響で、医療や介護の現場ではマスクやフェイスシールドといった防護具に対するニーズが高まっています。

 

積極的に確保することを求められる中で、不足するマスクや防護具をどのように調達すればよいか頭を抱えた医療機関や介護施設なども少なくありませんでした。

 

しかし介護施設内で感染者が発生したのに、事業継続を行うことを前提とした入所・居住系サービス、感染者や濃厚接触者へサービスを提供しなければならない訪問系サービスは感染症指定医療機関等と同じく優先される対象です。

 

ずっとマスクを装着していられない理由

以前から訪問先での手洗いや口腔ケア、排泄介助を行う際の手袋着用、訪問先から戻った時のうがいなど徹底している介護事業者は少なくありません。

 

現在ではこれらの対応に加えて、排泄介助以外にも別途手袋を常時装着することや、訪問先の室内で手すりの消毒を行うといったことも行う事業所が増えています。

 

さらに利用者の自宅を訪問している間は、密閉した状態を作らないように窓は開放した状態にするといったことも気を使っているようです。

 

しかし難聴の利用者に対して、介護スタッフがマスクを装着した状態で話をしても十分に聞き取れないことも少なくありません。そのため、聴こえにくさのある利用者に話しかける時にはマスクを外すこととなるでしょう。

 

さらに認知症の方の場合、相手の表情を読もうとするので介護スタッフがマスクを装着した状態ではコミュニケーションがとりにくくなってしまいます。体を密着させなければならない介助の際には、ソーシャルディスタンスを取ることはできないでしょう。

 

 

布マスクでは不十分という声も

それに加え、介護現場ではマスクや消毒用アルコールなどが十分とはいえず、政府も介護スタッフのために布マスクを用意しました。

 

しかし医療機関と感染リスクは同じなのに、医療者にはサージカルマスクであるのに対し介護スタッフには布マスクを配布することは問題ではないか?と感じている事業者も少なくないようです。

 

ただでさえ人手不足の状況で…

訪問介護に携わるヘルパーの中には、感染疑いで自宅待機中や濃厚接触者の高齢者やその家族の家を訪れることもあります。

 

ヘルパーは最初の研修で感染症についても学びますので、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症に対する知識は持っており対応もできるでしょう。

 

しかし新型コロナウイルスは未知のウイルスであり、対応するための策は万全とはいえません。そのためヘルパーも、不安を抱えたままで利用する高齢者の自宅を訪れなければならないのです。

 

それに加え、訪問介護のヘルパーの主力といわれる世代は60代であり、70代や80代なのに現役で働くヘルパーも少なくない状況という老老介護が進んでいます。

 

比較的若い世代のヘルパーも、子どもが幼稚園や保育園、小学校に通っているなど仕事と子育てを両立させたいと考える方が多く、新型コロナウイルスの影響で休園や休校などが続くほど仕事も休まなければならなくなるでしょう。

 

もともと人手が不足している業界なのに、新型コロナウイルスの影響でさらに人材が減少してしまうと、閉鎖しなければならない事業所が増えるとも考えられます。

 

介護事業所への支援は?

2020年5月27日、政府は新型コロナウイルスの第2次補正予算案を閣議決定し、事業者へ行う融資制度の拡充や介護職員に対する慰労金支給などを内容として盛り込みました。

 

新型コロナウイルスへの影響は長期に渡ることが予想されますが、介護事業所に対する抜本的な経営支援策は内容として盛り込まれていないので、支援なく「withコロナ」という環境の中での介護は容易とはいえません。

 

ただし現在、通所系や在宅で利用できる介護サービスを受けている高齢者やその家族は、利用者の心身機能が低下してしまうことを防ぐためにも、できる限りサービス利用を控えないことも必要となるでしょう。

 

現在、事業所によっては新規の利用者を受け入れないとしていることもあり、第2波、3波が訪れた時のためにもサービスとの関係を絶っていれば介護を受けにくくなると考えられるからです。

 

事業所側も、介護スタッフが安心してサービスを提供できるような対策を、第2波や3波が来る前に検討しておかなければならないといえます。

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