介護現場で事故やトラブルが起きてしまうと、一歩間違えば利用者の生命にかかわることもあるため十分な注意が必要です。
利用者を危険な状態にしてしまうだけでなく、介護を行うスタッフの精神面にも外傷を負わせることなったり訴訟問題へと発展したりすることもあります。
その反面、介護スタッフが利用者から暴言や暴力をから受けることもあれば、利用者の家族から無理難題を押し付けられることもあるため、介護現場におけるリスクマネジメントに注目が集まっているといえるでしょう。
介護現場のリスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、リスクを組織で管理していき、発生する損失を回避・低減させるための取り組みです。
介護現場でのリスクマネジメントとは、事故やトラブルの発生を未然に防ぐことや、発生する被害を最小限に抑えるために行う準備や予測を指しています。
介護現場で起こりがちな事故やトラブルを洗い出し、どのようなタイミングで発生するのか原因を分析すれば、事前に状況を予測し防ぐことが可能となるでしょう。
ただ、介護現場では身体的に不自由な高齢者や認知症の方などが生活しているため、完全に事故やトラブルを防ぐことは難しいと考えられます。
そのため万一事故やトラブルが起きてしまった時に備え、その後の対策なども行っておくことが必要といえるでしょう。
介護現場でリスクマネジメントが重要視される理由
介護現場は高齢者を相手としてサービスを提供することになりますので、他の業界よりも重大な事故やトラブルが発生してしまうリスクは高めです。
年齢が高く心身機能が低下している利用者が多くいるため、ちょっとしたミスやトラブルが大きな事故につながりやすくなってしまいます。
そのためリスクマネジメントが重要視されることとなりますが、その大きな理由として挙げられるのが利用者を命の危険にさらす可能性も考えられるからです。
もし利用者が転倒して骨折してしまうと、骨折したことを理由に自らが行動できなくなり、認知症を進行させてしまう可能性もあるでしょう。認知症によりすきを狙って徘徊を繰り返すようになり、交通事故などを起こしてしまう可能性もあるのです。
介護事故に対する訴訟件数も増加傾向にありますが、人手が不足している介護現場では十分なサービスが提供できなくなっていることも原因といえます。
仮に数千万円の損害賠償金を支払わなければならなくなったとしたら、高額な賠償金負担により事業所は倒産に追い込まれる可能性も出てきてしまいます。
そもそも訴訟問題に発展してしまえば、地域での介護サービス提供事業者としての信頼は失われることが予測されます。
そのため適切にリスクマネジメントを行い、利用者だけでなく事業所やスタッフを守ることも必要なのです。
介護現場でのリスクマネジメントのアプローチ方法
介護現場において、利用者、介護スタッフ、そして事業所を守るために適切なリスクマネジメントが必要不可欠です。
そのため介護現場でのリスクマネジメントへのアプローチ方法は、利用者の尊厳や安全を守ること、そして介護スタッフや組織を守ることという2つに分けて考えていきましょう。
利用者の尊厳や安全を守るために
利用者の尊厳や安全を守るためには、例えば利用者が転倒事故を起こさないようにするために、ヒヤリ・ハットの事例を介護スタッフから収集し共有することが必要です。
一歩間違えば重大事故につながった可能性のある、ヒヤっとしたことやハッと気がついたことを介護スタッフから集め、スタッフ同士で共有することで未然に事故やトラブルを避けることができるはずです。
さらに利用者の心身状態などを確認し、転倒などのリスクが発生しやすい状態か把握しておくことも必要といえるでしょう。
介護スタッフや組織を守るために
介護スタッフや組織が訴えられてしまわないように、万一事故が発生した時には証拠や根拠となる記録を残しておくことが必要といえます。
例えば利用者が転倒してケガを負ったとしても、十分に事業所側が転倒を防ぐ対策を講じていたのに、利用者が無理に行動しようとしたり家族が行動を起こさせようとしたりして事故が発生してしまうこともあるからです。
それなのに転倒事故への対策を怠っていたと訴えられてしまったり、転倒の際にできたあざや傷を介護スタッフからの虐待ではないか?と疑われてしまったりする可能性も否定できません。
このようなリスクを抑えるためにも、しっかりと日々の介護の記録や事故発生時の状況を証拠として残しておくことが重要となるでしょう。
単に報告書などの文書を作成すればよいと思うかもしれませんが、現場を写真で残すことや関係者の話を録音するという方法も有効です。
監視カメラや見守りロボットなどを使い、撮影や録画できる機能を利用することも介護スタッフや事業所を守るためのリスクマネジメントとして活用できます。