介護現場で現在注目されているメイクセラピー(化粧療法)。利用者の方たちが、介護施設で生活を送りながらも、外見を美しくするだけでなく気持ちを前向きにするという内側からの支えとなる効果が期待できます。
女性なら誰でも美しくありたいものですし、男性にも実はこのメイクセラピーは心身を元気にしてくれるとされています。
そこで、介護現場で働くことを希望するなら知っておきたい、介護現場で注目されているメイクセラピーについてご説明します。
近年注目されつつあるメイクセラピー
メイクセラピーは化粧療法ともいわれており、白粉や紅などをつけ顔などを装い飾る化粧を用いて、生活を豊かにすることを目指す療法のことです。
介護分野では、認知症予防や介護レベルが進んでしまうことを防ぎ、改善や日常生活動作(ADL)、生活の質(QOL)を維持・向上させることを目指し行われることが多くなっています。
化粧は女性にとって身だしなみともいえ、人と会うときや出かけるときには当たり前のように行われています。しかし介護や疾患を患ったことを理由に、自宅にこもりがちになったり介護施設に入所したりなど、だんだんと普段から化粧をすることから遠ざかる高齢の方も少なくありません。
しかし日本人の平均寿命は年々延びており、100年人生といわれるほどとなりました。そのため、年齢を重ねても自立した生活を楽しむことのできるように、介護分野でも今メイクセラピーが注目されるようになっています。
化粧が高齢者にもたらす効果
ずっと自宅にいたり施設の中で過ごしたり、部屋にいる時間が長く人と接する機会が少なくなると、自然と化粧やおしゃれをしたいという気持ちもなくなってしまうものでしょう。
しかしたとえ1日室内で過ごすとしても、化粧をすれば表情も気持ちも自然と明るくなり、外にでかけたり人とコミュニケーションをとってみたりと、前向きな気持ちになれるものです。
外にでかける機会が増えれば、人と接したり交流したりする機会も多くなるでしょうし、社会とつながりを保つこともできます。
心理的に自己肯定感が増すことで安心感を得ることもでき、自信がついたりリラックスできたりなど様々な効果が期待されます。それにより、認知症防止や進行を遅らせるなど、利用者にとっても良い結果を生むこととなるでしょう。
周囲からの声掛けも自然と増すことになれば、人との関わるきっかけもできます。自分で化粧を行ったり顔をマッサージしたり、表情を研究したりなど手や顔を動かすことになるので、脳にも良い刺激となるでしょう。
顔の筋肉のこわばりがなくなっていくことで、筋肉がだんだんと拘縮してしまう症状などがあっても、表情が作りやすくなってくることが期待されます。
男性にもメイクセラピーは有効
化粧といえば女性だけに効果があると思うかもしれませんが、男性にも良い影響を与えることが可能です。
顔のストレッチや、ハンドケアやスキンケアにより、男性にも女性同様に顔の筋肉をやわらげることや手を動かすことでの脳への刺激など期待できる部分は多々あります。
さらに利用者の女性がきれいになることで、その主人である男性にも影響があります。最初は高齢なのに化粧などする必要はないと否定的だったご主人でも、施術を重ねだんだんと明るくよい表情を見せるようになった奥様を見て、喜びを得るといったこともあるようです。
介護が必要になると、本人だけでなく家族もつらい思いを感じることがありますが、イキイキとした姿に奥様が変わっていくことができれば、ご主人や家族なども安心できることでしょう。
いずれ最期の時を迎えることになっても、亡くなる間際まできれいな方だった、その方らしい人生を過ごし終えることができたと感じることができたとしたら、残された家族もただ悲しみに包まれるだけでなくよい人生を送ることができたと見送ってあげることができるはずです。
今後も注目を集め続けること間違いなしのメイクセラピー
メイクセラピーは今の段階では治療法としての確立されているわけではありませんが、心理的・社会的・生理的な効果を活用し生活の質(QOL)を向上させることを目指すケアとして、介護分野でも広がりを見せています。
介護分野では、利用者の生活を支えるための介助、リハビリなど身体的機能維持など、生きるために必要なことが最も優先されます。
ただ、身だしなみや美しさを保つといった領域も、利用者本人が自分らしく生きるために必要なことであるといえます。
メイクセラピーには顔へのスキンケアや化粧だけでなく、表情筋のストレッチ、ハンドケア・ハンドマッサージ、ヘアケア、ネイルケア・マニキュアなどいろいろ種類があります。
よりよい人生を送るため、喜びを感じてもらえるケアを提供し、その価値を感じてもらえる新たな取り組みとして注目されているのがメイクセラピーです。
美容には生きる力やその人らしさという魅力やパワーを引き出す力があります。介護業界でも新たな価値観として期待されています