介護の現場でも拘縮ケアは重要ですが、基本中の基本といえるのが「ポジショニング」です。
筋性拘縮が起きてしまう根本的な原因は寝たきりとされており、ずっと横になったままや仰向けの状態を続けるなど、同じ姿勢を維持したままは危険といえます。抗重力筋が過剰に影響することにより、筋肉が収縮したり身体が反ったりなどにより拘縮を起こしてしまうからです。
要介護レベルの高い方や、拘縮が進んでいる方の場合、ベッドで過ごす時間が長くなりがちですので、横になっている時の姿勢を見直すことが大切といえるでしょう。
その際に重要になるのがポジショニングの考え方や知識で、拘縮が起きる原因と仕組みに基づいて筋肉が緊張してしまう状態を軽減させるようにしましょう。
ポジショニングが有効なのは?
ポジショニングは筋性拘縮などにより全身が拘縮している時に有効であり、片側がマヒしているなど部分的な拘縮であれば、動ける部位までポジショニングしてしまうのは逆効果です。
あくまでも寝たきり状態などにより、全身が拘縮しているリスクが高い場合に有効であると認識しておきましょう。
横向きでベストといえるポジショニングとは?
完全な横向きの状態で90度側臥位のことを横向きといいます。横向きであれば一般的に安定しますので、筋肉が緊張せずゆるみやすいことがメリットです。
横向きの場合、下側にかかる圧をできるかぎり抑えるようにして、上側に位置する手足を支えるようにしてください。さらに次のことを意識した状態でポジショニングを行うようにしましょう。
首のうしろにすき間を作らない
横向きの場合、肩幅の広さ高さが出てしまいますので仰向けより首のうしろ側にすき間ができてしまいます。頭を抱えまくらを当てるようにし、すき間を埋めるようにしてください。
肩甲骨を開くと背中の緊張はゆるむ
うしろに少し倒れる横向きの姿勢であれば肩甲骨が寄った状態となるので、完全に横に向きにすると肩甲骨が開いて背中の緊張はゆるみます。
ひざを深く曲げて安定させる
膝の角度を中途半端な状態にしてしまうと、下肢に負担をかけることになるのでしっかりと曲げて安定させましょう。
わきの下にすき間を作らない
横向きでは上側に位置する肩やうでが下方に落ち不安定な状態となりますので、うでに支えがないすき間のある状態では筋肉が緊張してしまい拘縮につながりやすくなります。
両腕の間に大きめのクッションや抱き枕などを深く入れ、上肢全体を支えるようにしましょう。わきの下から深く入れることがポイントです。
肩や腕が動かない状態の場合には、小さめのクッション複数個で使いすき間を埋めるようにします。
上側に位置する腕の高さが上がってしまうくらいの大きさのクッションを使ってしまうと、肩甲骨が寄ってしまい背中が緊張するので逆効果です。
腕の高さが肩よりも少し低めになるくらいのクッションを使うようにしてください。
左右の足は上下で重ね平行に保つ
足はずらさず、左右が上下で重なっており、両足を平行に保つことが必要です。左右の足がずれてしまうと全身がねじれたり傾いたりするので拘縮を進めてしまいます。
両足が平行
横向きでは上側に位置する股関節が内側に入り込んでしまうので、股の鼠径部表面の神経、血管、リンパなど束のようになり通っている部分が圧迫されて強い痛みを感じてしまいます。
両足の内くるぶしやひざの骨がぶつかった状態になると褥瘡もできやすくなるので、両足の間にクッションなどを入れ予防するようにしてください。
背骨はまっすぐの状態で
背骨がまっすぐの状態でねじれや傾きがないことが基本です。背面から見た時に、背骨から足先まで一直線となる姿勢を保ちましょう。
背骨がわん曲した状態では、ねじれや傾きを起こして拘縮が進んでしまいます。
横向きは褥瘡ケアには適していない?
横向きの場合、骨の突出部位があたりやすいので褥瘡ケアの観点から考えた時には危険と考えるケースもあります。
例えば、骨の突出が確認できるほど痩せていたり、類天疱瘡など皮膚や粘膜に水疱やびらんができる疾患があったり、数値上の栄養状態が悪いと判断できる場合は横向きの状態では褥瘡のリスクを高めることになるでしょう。
ただ、これらの要件に該当しない場合は積極的に横向きを試したほうがよいとも考えられます。
これまで横向きを行っていなかった場合や、何らかの不安要素があると考えられる場合には、介護スタッフ独自で判断するのではなく、医師、看護師、管理栄養士など他職種の専門家と意見交換を交えながら安全か確認した上で実践することが大切です。
どのくらいの期間で拘縮が起きる?
関節をどのくらいの期間、動かさい状態が続いた時に拘縮が起きてしまうのかというと、研究結果では2~3日で組織が変化し始めるとされています。
動きのない状態が血液の流れを悪くさせ、関節や周囲に栄養を送ることができなくなるため、拘縮が始まるという流れです。
特に関節周辺の皮膚や筋肉などは硬くて伸びにくいので、関節がだんだんと動きにくくなってしまいます。
一度拘縮となれば治すまで時間がかかりますし、完全に治らない場合もあります。普段から拘縮にならないポジショニングを実践していくようにしましょう。