介護の現場では、介護を必要とする方に対する声かけが大切です。1つの声かけは1つの気遣いとなり、介護者と要介護者をよい関係に導いてくれます。
コミュニケーションを取り意思疎通をはかることは介護を行う上で重要なことです。
介護の現場では、毎日のように、移乗や移動、食事、着脱、排泄、入浴などの介助が必要となるので、これらの介助動作を行う時には声かけを行い、要介護者にこれから行おうとする介助の内容を知ってもらい、安心してもらうことが必要だからです。
高齢化により介護が必要になれば心身の低下が顕著にみられるようになり、心身のバランスが崩れてしまえばストレスを感じることになってしまいます。
このような状況で介護が必要な高齢者を支えるためには、自尊心を傷つけたり不快感を与えたりしないよう、言葉に気を遣い丁寧に接してあげる声かけをすることでしょう。
認知症の方に対する声かけは特に注意が必要
認知症になると脳の機能は低下してしまうので、だんだんと会話ができなくなることもあります。また、最近の話を記憶しておくことが苦手な場合もありますが、古いことは記憶していることが多いようです。
そこで、高齢者が昔遊んだ子どものころを思い出せるような話や、若い時代の記憶を引き出すような積極的な声掛けを行うことにより、少しずつ会話の量も増えていくでしょう。大切なのは脳を活性化させることで、認知機能を改善させていくことに努めることです。
判断や認識する能力が低下しているので、ゆっくり分かりやすい言葉による声かけを心掛けるようにしてください。同時にいろいろな言葉で声かけをしても理解できないことも多いので、1つずつ話していくことも必要です。
介護が必要な方に対する声かけの基本
介護を必要とする高齢者が、認知症でもそうでなくても、声かけを行う時に気を付けたいことは基本、同じです。どのようなことに気を配り、注意して行えばよいか把握しておくようにしましょう。
- 大きな声で、耳元で、ゆっくりと
高齢者の方は老化により耳が聞こえにくくなっていることもあります。普通に話しかけても無視をしているのではなく、単に声が届いていないというケースもあるようです。
そのような状況を理解できていないと、言葉すら理解できなくなっていると勘違いしてしまうことになるので、耳元で、大きな声でゆっくりと語りかけていきましょう。
- 目線の高さを合わせた声かけを
一日中ベッドで過ごしている方や、普段、車いすを利用している方への声かけは、体勢を下げて本人と目線の高さを合わせることを行います。
上から話しかけられても声が届きにくくなりますし、声かけをされている立場になればどこか見下されているような気持ちにならないとも限りません、
目線の高さを合わせることは、円滑で気持ちのよいコミュニケーションを取るために大切なことです。
- 否定しない、叱らない
高齢の方の発言に対し、否定したり叱ったりということが無い様に心掛けてください。何か間違った捉え方をしていたり、記憶違いのことで間違った発言があったとしても、否定して間違いを認知できる間はよいです。
しかし、同じことを何度も繰り返したずねられるなど特に改善が見られない場合、その場は正すことができてもあまり効果はありません。否定しても理解してもらえないばかりか、ますます困惑させるだけとなるでしょう。
行動についても否定せずに受け入れる姿勢を見せたほうがよいといえます。行おうとしている行動を否定し、だめだと頭ごなしに叱ってしまうと、疎外感で閉鎖的になってしまう可能性があります。
ただ、安全上問題がある場合にはむやみに肯定するのも危険です。大切な命を預かる現場ですので、身に危険がおよぶ行動が見られる場合には、別途、対策を講じることを検討していくことが必要です。
安心して介護サービスを利用してもらうために
大切なことは介護を受ける高齢者の尊厳と自尊心を重視した声かけを行うことです。もし、寝たきりの状態や認知症などでうまく会話ができない状態であったとしても、言葉だけでなく身振りや手振りを交えた声かけはできます。
声かけをするのとしないのとでは、介護を受ける側としてはそれぞれの行為を行う上で、大きな違いがあらわれます。
例えば車いすに移乗する際、何も声をかけずにいきなり身体を置きあがらせ車いすに移動させられたとしたら、誰でも驚いてしまうものです。朝起きた時、基本的なあいさつもなく朝食を目の前に置かれたら、おいしく頂こうという気持ちになるでしょうか。
もし自分が介護を受ける立場になった時、声をかけてもらうのとそうでないのとでは気持ちの上で大きな違いがあるはずです。
何の声もかけずにいきなり介助しようとすれば、警戒感をもたれ信頼関係を築くこともできなくなるでしょうし、拒否されることになってしまいますので、安心してもらえる声掛けを行うことを心掛けましょう。