コラム

過疎化が進む地方における介護の現状と課題

日本は核家族化が増えている状況であるのは、地方で家族が暮らしていても、いずれ子は独立して都会に進学や就職し親元を離れてしまうことが多いからです。そのまま子は結婚して親とは別に家を建て、残された親は地方でこれまでどおり生活を続けるといったことが多くみられます。

 

若い世代が都市部に集中し、地方や田舎には高齢者が生活するといったことで、高齢者が高齢者を介護する老老介護はめずらしいことではなくなっているのです。

 

日本は地方で生活する高齢者の介護における問題は年々大きくなっていますが、今後、介護の現場に携わるとするならば、この現状を知っておくことが必要といえるでしょう。

 

過疎化が進む地方の現状

若い世代が都市部に移動することで、地方に人口は減少していきます。買い物や仕事をする場所もだんだんと少なくなり、家から離れた場所まで何をするにも足を運ばなければならなくなります。

 

このような地方の現状は全国至るところで見られる状況にあり、地域の全住民に対する高齢者の割合が5割を超えるケースも増えつつあるようです。

 

5割を超える高齢者の割合ということは、その地域に住む方2人に1人は高齢者ということです。もし何か問題が起きても対処の遅れが生じるでしょうし、介護を行う側も高齢者になることが考えられます。

 

過疎化により色々な負担が増大

行政によっては人口減少により税収も下がり、医療や公的事業に対する予算も不十分となるでしょう。そうなると現役世代の保険料は高くなり、生活ライフラインの費用も向上してしまいます。それまで地域活性に賑わっていた商業施設なども撤退するしかなくなり、どんどん地域は衰退してしまうことになるのです。

 

結果、若い世代がさらに都心部へ移動してしまうこととなってしまうでしょうし、予算不足で行政サービスが悪化することも予想されます。

 

 

高齢者は簡単に住む場所を変えることはできない

若い世代なら利便性を求めて都心部に移動することも難しくないでしょう。しかし、それまでその地域で生活してきた高齢者が簡単に住む場所を変えることは容易ではありません。

 

住み慣れた街を離れることや、先祖から守ってきた家やお墓などをそのまま置いて出ることはできないと考える方もいるでしょうし、地域の方とこれまで築いてきた関係やコミニティも失われることになってしまいます。

 

利便性を重視することで、今度は別の精神的な負担がのしかかってくることになると考えれば、不便さを感じても地方で生活を続けようとする高齢者が多いのが現状といえます。

 

介護サービスも簡単には利用できない現状

ただ、過疎化している地方では、商業施設や医療機関なども減少傾向にあるため、日常生活に必要なものを買いに出るのさえままならない状況です。

 

車がなければ不便だとわかっていても、高齢であることで運転ができないこともあるでしょう。バスや電車など交通機関も整備されておらず、1時間や2時間に1本しかバスが通らないというエリアもあるのです。

 

それに加え、過疎化が進む地方では、介護が必要な高齢者が多いのに介護サービスの利用頻度も週1度程度とされています。

 

その理由として、介護サービス事業所そのものの不足していることや、介護を同居の家族などが行っていることが挙げられます。

 

また、介護サービスを行う事業所が少ないということは、同じ事業所に利用が集中してしまうことで、事業所の人手が足りてないのも理由でしょう。

 

介護サービスの質も地方は向上しにくい?

地域の高齢者が安心して介護サービスを受けることができるような環境が整備されるためには、介護サービスの種類や量を補うことが必要であるといえます。

 

都市部なら介護サービス事業所も多く存在しますので、介護を必要とする利用者が自分の希望するサービスを受けることができます。

 

さらに、介護サービス事業所の数が増えることにより、事業所同士の競争心からサービスの質も向上させようと努力することになるでしょう。

 

その一方、過疎化が進む地方では、介護サービスを行う事業所自体が少ないので、同じ事業所に頼るしかなくなってしまいます。仮にサービスの質がそれほど充実しなくても、利用を希望する方が途絶えないことで、サービスの向上や広がりはそれほど期待できないでしょう。

 

地方でも介護サービスの事業所は人手不足が深刻化

このような現状に加え、介護に携わるスタッフも高齢化が進んでいます。本来なら介護サービスの事業所の働き手となる若い世代も、都市部に移動してしまうので若手のスタッフが確保しにくい状況にあるといえます。

 

地方の高齢者が安心して介護を受けるためには、介護サービスの魅力を伝え、幅広い世代のスタッフが確保されていくことが課題となるでしょう。

 

都市部との地方では介護サービスに格差があります。介護保険サービスだけで充足させることは難しいので、今後はどのように介護保険外の介護サービスを利用できるような状況にするのか考えていかなければならないでしょう。

 

都市部でもボランティアグループに参加することもできますし、手伝えることは何かあるはずです。もし介護現場で働くことを考えるなら、地方の介護に対して抱える課題にも向き合っていくようにしてはいかがでしょう。

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