日本は恐るべきはやさで高齢化が進んでいますが、介護職における介護職員の不足は深刻化しています。2025年には介護を必要とする方に対し、介護士の人数が約34万人不足すると推論されています。
介護現場で介護士などの人材が不足することは、それぞれの介護士の負担が増えることをあらわしています。ただでさえ、肉体的にも精神的にも大変な仕事であると認識されている介護職において、なぜこのような介護士の人材が生じているのでしょうか。
介護現場の人材不足の現状
2000年に介護保険制度が開始された当初の介護職員数は約55万人でした。それがその12年後の2012年には約3倍以上の168万人まで増えました。
ただ、2012年の要介護者は約533万人であるなど、介護職員など介護者と介護を受ける要介護者の数には大きな差が生じていたといえます。
この介護者と要介護者のギャップは、今後もさらに拡大されることが予想されているのです。
介護職は離職率が高い
介護職は離職率が高い仕事であることは、実際に介護現場で働き離職した方の約7割が3年未満の勤務で退職しているというデータからも確認できます。特に、規模の小さな事業所では離職率が高くなりがちです。
介護職の人材が不足している理由
ではなぜ、介護職として働く方は離職してしまうのか、そもそもの人材不足の原因は何なのかを確認してみましょう。
仕事内容がハード
介護現場の仕事内容は確かにハードで、以前はきつい、臭い、危険、といった3Kの職種といわれていたほどです。
とにかく肉体労働で、残業時間も長く、夜勤などもあって大変といったイメージばかりが先行してしまい、新卒の学生や転職希望者にとっては好まれにくい傾向があるともいえます。
労働に対する給料が見合っていない
介護職は仕事がハードであることは間違いないですが、仕事の大変さに見合う給料を受け取れていないと不満を抱える方が多いといえます。
人材不足という問題を抱えている以上、1人の介護職員にかかる負担も大きくなるため、通常の仕事内容以上のことを行わなければならないことが多いことが理由です。
指導や教育を十分に受けることができない
人材不足も影響していることで、新しく介護職員を採用しても、しっかりと丁寧に指導を行う余裕がない事業所も少なくありません。
そのため、即戦力として働くことができる人材を求める傾向がみられたり、入社したばかりで入浴や食事の介助など、本来であれば少しずつ覚えた後で任される仕事を早々にこなさなければならないこともあるでしょう。
人材を育てることができる土壌が整備されていないことで、特に未経験者などは介護職員として育ちにくいことが離職に繋がっているとも考えられます。
休暇を取りにくい
人材不足であることは、介護職員のシフト数を増やし、希望する日に休暇などを取りにくい状況を作ってしまいます。
十分に休みが取れない介護現場では、疲弊してしまうことで仕事に対するモチベーションも下がりがちです。勤務時間内に記録を記入できずに、残業して書くという方も多いですが、記録を記入する時間は給料に反映されていないことも多いといえます。
介護職の人材不足の問題を解決するために
少しでも多くの人材が介護職で働きたいと思うには、現在、人材不足が生じている原因を解決させることが必要になります。
しかし、人材不足が生じている原因はどれも人が足りないから起きていることばかりで、人が不足する状況が続けばさらに離職率が高くなる可能性もあるなど悪循環です。
少しでも介護職員の負担を軽減できるようにと、厚生労働省の施策を活用しながらそれぞれの事業所が待遇など改善することが求められるでしょう。
介護職を目指す方に嬉しい制度も上手く活用してみては?
しかし、現在、人材不足の状況にある事業所や施設の待遇などが改善されるには、そもそも人材がしっかり補われることが必要です。
そこで、せっかく介護職の一員として働くことを希望しているのなら、厚生労働省が設けている制度などを活用して知識や技術の習得に励むことなど検討してみましょう。
厚生労働省の貸付制度
厚生労働省では、離職した介護人材でも一定知識や経験を持つ方に対し、介護職員として再就職する時にはその準備金を融資してもらえる「再就職準備金」の貸付制度なども設けています。
2年間、介護職員などの業務に従事すると、その貸付額の返還は免除されるので、長く働くことの励みにもなります。
社会福祉協議会の貸付制度
また、各都道府県の社会福祉協議会などが行う「介護福祉士修学資金等貸付制度」など、介護福祉士や社会福祉士を目指すために養成施設に在学する方を支援する制度もあります。
卒業後はその都道府県内の社会福祉施設などで継続して5年間、介護業務や福祉に関する相談援助業務に従事した場合、借りた修学資金の返還は免除となります。
少しでも介護職が働きやすい現場になるためにも
入浴用リフトや介護支援ロボットなど、介護職員の肉体的負担を軽減することができる機器などを導入する施設も増えつつあります。
介護職の人材確保が重要な課題となっている状況ですが、その問題を解決するためにも実際に介護現場で働くことで、社会に役立つ人材と認められるでしょう。
長く働き続けることで、返還しなくてもよい制度が設けられるなど、少しでも働きやすくなる環境を整備する制度や仕組みが整いつつありますので、まずは応募してみることから始めてみませんか?