これから介護の現場で働こうとする方は、もし仕事をする上で腰を痛めてしまった時、労災申請などは可能なのか気になるところかもしれません。
介護職の現場で働く介護スタッフに見られがちな腰痛の症状は、はたして労災申請で認められるのでしょうか。
介護スタッフに腰痛の症状があらわれることはめずらしくない
介護業務に従事していると、業務を行う上で中腰になったりかがんだり、要介護者を支えたりなど、身体を使うことが多いため、腰痛などの症状があらわれがちです。
現在、介護業務に従事するスタッフも高齢化が進んでいることもあり、例えば定年間近の介護職のスタッフが腰痛悪化を理由に、1か月ほど仕事を休まなければならないといった状況になることも考えられます。
ただ、このような仕事による腰痛で静養する場合、例え仕事を休むことになったとしても、労災として認定されるのではないかと考えてしまうものです。
介護業務は腰に負担が掛かりやすい業務が多い
介護業務は、高齢者をベッドから起こしたり、車いすから抱きかかえたりなど、腰に負担が大きくかかる作業が多いことが特徴です。
ただ、このような業務が直接的な原因であると判断されれば労災として認定されると考えられますが、日々の業務による腰への負荷が蓄積したことで腰痛が出てきた場合、業務との関連づけることを証明することが難しい場合もあります。
介護業務だけでなく、加齢を伴う症状と考えられる場合、医学的検証も必要になるので労災として認定されることは難しいケースも考えられます。
労災として認定されるためには
通常、職場で働くスタッフに、業務上、負傷や病気などの症状があらわれた場合には、労働者災害補償保険法(労災保険)から給付が行われます。
この場合、労災として認定されるかが重要になりますが、その判断は労働基準監督署が行います。
その時、判断の材料となるのは、「業務起因性」と「業務遂行性」の有無です。
業務起因性とは、発生した疾患や負傷などの業務に因果関係があるかどうかで、業務遂行性とは労働契約に基づいて使用者の支配下に置かれて業務を行っていた時のものかということになります。
両方の要件を満たすことにより、労災として認定されることとなり、労災保険から給付を受けることが可能です。
業務上に発生した腰痛に対する労災認定の基準
では腰痛については、その原因が業務上によるものか、それとも普段の生活なども関係しているのか、さらに加齢に伴ってのものかなど、判断することが難しい場合がほとんどです。
そこで、厚生労働省から業務上腰痛の認定基準について、認定の基準が示されています。
厚生労働省の基準
通達による基準では、腰痛を「災害性の原因による腰痛」「災害性の原因によらない腰痛」に区分し、労災として認定するか判断することになります。
災害性の原因による腰痛は、業務を行う上で突然起きた腰痛などです。例えば、高齢者を車いすから抱きかかえ移乗しようとした時に、衝撃によりギックリ腰になってしまったというケースなどが該当します。
災害性の原因によらない腰痛は、このようなケースとは反対に、原因が明確でなく、積もった腰への負担によるものといえるでしょう。そのため、腰痛が労災として認定されるケースはそれほど多くないと考えられます。
どのようなケースなら労災と認定される?
ただ、災害性の原因によらない腰痛であったとしても、腰に対する負荷がかかる業務に従事していることで、3か月以上の間に筋肉疲労が蓄積していた場合や、10年以上など長期に渡り従事したことで骨が変化したことによるものの場合は、労災として認められる可能性が高いでしょう。
例えば20キロ移乗の重量がある物を運ぶ業務や、軽重不同の物を繰り返し中腰で取り扱う業務であったり、腰部に極めて不自然または非生理的な姿勢で日々数時間程度行う業務を行っている場合、さらに長時間に渡り腰部を伸展できない同じ作業姿勢での作業、腰部に著しく粗大な振動を受ける作業を続けなければならない業務などが該当します。
そのため、介護施設で入浴介助をしていてスタッフがギックリ腰になってしまったというケースでは、普段とは違う動作により突発的に腰に急激な力が加わったのなら、災害性の腰痛と認定される可能性があるということです。
入浴介助を3か月から数年間に渡り、継続して行っていたことによるものなら、非災害性の腰痛と認定される可能性も出てきます。
もし介護の仕事で腰痛になったら
もし介護現場で働いていて腰痛の症状が出てきた時に、それが労災として認定されるためには、どれくらいの就労期間中において、どのような行為をどの頻度・時間において行っていたのか、さらにどのような姿勢を取る必要があったのかなどが重要となるでしょう。
ただ、実際に仕事が原因で腰痛になったのなら、一度勤務先に労災を利用できないか相談してみることが大切です。
腰痛は一度回復しても、また同じ姿勢や作業を繰り返すことで再発する場合もありますので、まずはしっかり痛みを治し回復させることが重要となります。