適度な運動が健康によいことは、高齢者だけでなく老若男女問わず共通しています。特に認知症を抱える高齢者の方にとっては大切なことであり、「運動療法」として取り組むことにより、身体機能を強化させ、気分のリフレッシュやストレス解消などにも効果が期待できるとされています。
認知機能を向上させ、心の安定や自信を取り戻す上でも重要なため、運動療法による見込める効果やメリットを確認しておきましょう。
運動療法の最大のメリットとは?
運動療法は心身の機能を同時に向上できることが最大のメリットといえます。
心と体は密接に結びついているので、身体機能が低下すれば同時に認知機能を低下も引き起こすこととなり、メンタル部分の健康も損なうことになるので、認知症がますます進んでしまうかもしれません。
適度な運動は心と体の両方に働きかける事となりますし、散歩やストレッチなどなら道具なども必要なく、日常生活にも簡単に取り入れることができます。
認知症が進行しても継続されやすいことが特徴
仮に認知症が進んでしまった場合でも、運動療法は続けやすいことも特徴です。
認知症で色々なことを忘れてしまったとしても、体で覚えたことや生活習慣などは自然に身についていることが多いので、先に習慣づけておくことで生活を長期間支えてくれることになるはずです。
介護する側も一緒に楽しみながらできる
行う運動によっては、介護する方も一緒に楽しむことができます。運動を楽しむことで、介護する方の健康維持にも役に立つでしょうし、同時にストレス解消や気分のリフレッシュにも繋がるはずです。
介護する側とされる側、両方のコミュニケーションを円滑にすることにも繋がるでしょう。
身体だけでなく脳も鍛えることができる
適度な運動は、筋力を強化し、関節の動きを円滑にします。心臓や呼吸機能を高めることもでき、血流や便秘の改善、生活習慣病の予防など、いろいろな効果が期待できることも特徴といえるでしょう。
また、体を動かすのは脳の指示によるものなので、脳を働かせることにも繋がります。達成感や成功した体験で、自信を取り戻すきっかけにもなるでしょう。
生活リズムを整えることに繋がる
運動で活動と休息にメリハリがつくと、生活リズムを整えることができます。取り入れられる運動療法の内容も、レクリエーションとしてゲームの形で行うものもあれば、参加者同士が交流する機会になるような内容などいろいろです。
ウォーキングや体操、筋力向上を目指す筋肉トレーニング、関節の動きを改善させたり柔軟性を高めることを目的としたストレッチ、ボールなどを使った簡単なゲームなど多種多様に行われています。
ただ、身体への負担が大きくならないためにも、30分以内で終わらせることがほとんどであり、内容によっては5~10分などで終了する場合もあります。無理のない内容と時間の設定を十分検討し、実施することが大切といえるでしょう。
持病がある方には注意!
また、高血圧を抱えている方に負荷をかけすぎることは危険ですし、糖尿病を患っている方は神経の鈍磨があるので無理に歩いて靴擦れを起こすと、治療が難しくなります。利用者が抱える持病にも配慮した内容を検討することが必要となるでしょう。
運動療法を行う前には、利用者の持病や身体機能などをかかりつけ医や看護師、理学療法士などから専門的な視点でアドバイスしてもらい、判断を仰ぐことも必要です。
また、認知症の方は昼夜が逆転している場合もありますし、時間帯などで体調が変わる場合もあります。その変化に気がつかないまま運動療法を実施してしまうと、体調を悪化させることがあるのでその点にも注意が必要です。
もし、普段と違うと感じる状況や要因がある場合には、運動を中止する、または軽減や回数を減少させるといったことを検討し、注意して観察するようにしてください。
難しすぎるプログラムは避けること
運動療法を続ければ認知症が治るわけではありませんが、楽しみを見つけたり、成功や達成した喜びを分かち合うことはできます。
ただ、与えられたプログラムが難し過ぎると意欲を失うことになるでしょうし、反対に簡単すぎれば達成感を得ることに繋がりません。
認知症の方は試されることが苦手なので、失敗することにより多く傷ついている場合もあります。そこで、目安としては7~8割成功できることを考え、自尊心を引き出すことができるレベルの運動を行うようにするとよいでしょう。
しっかりとコミュニケーションを取りながら実施すること
運動の指示をうまく理解できない場合や、理解できたとしても次の動作に移ろうとした時、何をすればよいか忘れることもあるでしょう。
そこで馬鹿にされたり、責めるような態度をすれば、もう運動に参加したいと思わなくなるでしょうし、運動自体が嫌いになってしまうかもしれません。
理解しやすい言葉で身振り手振りも使いながら、どのような運動を行うのか伝えるようにしてください。
ただ、運動に潜むリスクも見逃してしまいがちですので、持病がある場合などは注意を払い、専門家の指示を仰ぎながら適切な運動療法を取り入れるようにしましょう。