介護施設を利用されている方は普段の生活を介助者に見せることになります。それに伴い、介助者はプライバシーの保護を徹底しなければ、利用者のプライドを傷つけてしまうのです。
利用者にとって、見られたくない、知られたくないという部分にどうしても介助を通して触れなければならない時はありますよね。そんなときにどのように配慮するのかが重要になります。
特に、考えられるのが入浴や排泄などの介助ではないでしょうか。本来なら人に見られることのない部分を見られる、知られることになるので、介護スタッフのさりげない気遣いや心配りが重要になります。
今回は、介護における利用者のプライバシーの保護の重要性についてご説明します。
利用者立場になってプライバシーの保護について考えましょう!
利用者の方は介護施設に入る前は「人に見られない生活」をしてきたのに施設に入ることで「人に見られる生活」に変化するのです。もしくは、今まで「できていた」排泄などの行為を「介助なしではできなくなってしまう」ことになってしまうのです。
そのような変化が起こった時に高齢者の方はどう思うでしょうか。恥ずかしいという羞恥の気持ちや情けなさや申し訳なさといった罪悪感を持っているかもしれません。また、普段はできていたことができないというプライドが傷つくかもしれません。もちろん、人によってすごく繊細にそのことを気にする方もいることも理解できるのではないでしょうか。
そのような気持ちの時に、介護者に不用意にプライバシーを配慮されたらどうでしょうか。プライドがさらに傷つけられたり、ストレスが溜まり不満の原因になったりすることが考えられます。
例えば、介護者が利用者の家族構成や利用者の病気や障害についての個人情報データ、排泄などの利用者のデリカシーな部分などを外部に不用意に漏らすとしましょう。そのようなことをされた利用者は、介護者に不信感を持ち、施設利用の満足感が下がり、関係性が崩れることによって介護者に不満をぶつけてくる可能性もあります。そのようなことにならないようにするために、利用者立場になってプライバシーの保護について考えましょう!
排泄介助では利用者に対して入念にプライバシー保護の配慮をしましょう!
排泄介助では利用者に対して入念にプライバシー保護は重要です。例えば、排泄介助の際、利用者がトイレ便器に座っている姿が外から見える状態にしていたり、大きな声で声掛けをしたらどうなるでしょう。施設を利用している周囲の方に自分の見られたくない姿を知られることになり、最悪の場合、トイレにいくことを拒否するようになるかもしれません。
居室内のポータブルトイレを利用する場合でも、カーテンなどを閉めて周りの方に見られないようにすることは必要ですし、トイレから利用者が出る時には着衣に乱れがないように整えてあげることが大切です。
多床室などで寝たきりの利用者のオムツ交換をベッドで行う時も、そのベッドが窓際だからといって、カーテンを入口側だけ半分閉めて介助するといったことは行うべきではありません。相手の立場になって見られたくない場面は特に注意して配慮するようにしましょう。
排泄介助の方法で注意すべきポイント
排泄介助を行う際には、事前に介助の手順や必要な物品などを確認しておき、陰部を露出する時間は最小限に抑えるように工夫するべきです。
寝た切りの方に対する排泄介助で注意したいことは、オムツやリハビリパンツの交換を行うのなら、他の利用者から見えないようにカーテンを閉めたり、排泄物は手早く処理して臭いが周囲に伝わらないような気遣いも必要となるでしょう。
また、トイレで排泄が可能な方に対して配慮することは、利用者がトイレの個室に入った後はできるだけドアの外で見守るようにし、急かす声掛けなどはしないことです。排泄物の観察を行う際には利用者の前で記録を取ったり、感想などを口にしないようにしましょう。
自分の排泄する姿や排泄物は、本来であれば「絶対に見られたくないもの」です。その人の健康や清潔を保つために必要だからこそおこなう排泄介助ですが、利用者がそのような思いを抱えながらケアを受けているという前提を忘れないようにしましょう。
利用者の身体状態によって判断を変えましょう!
介護が必要な方の身体状態などによって、選ぶべき排泄方法も違ってきます。そのため、どの方法が最も適しているのか適切な判断が必要です。
自力では起き上がることはできる場合については、ポータブルトイレを利用すると、ベッドのすぐ近くに設置しておくことで排泄が可能となります。
また、姿勢を変えることができる場合については、差し込み式便器や尿器を用いた排泄を行うとよいでしょう。自分で陰部に容器をあて排泄できるのなら手助けせず自分で行ってもらうほうが、自尊心を保つことに繋がります。
そして、寝たきりの方の場合については、尿意や便意を伝えることができるのなら、差し込み式便器や尿器を使ったほうがよいでしょう。ただ、尿意や便意を伝えられない、そもそも感じることができない、意思疎通が難しいという方の場合、オムツの使用で対応することになります。
まとめ
今回は、介護における利用者のプライバシーの保護の重要性についてご説明しました。今までできていたことができなくなってしまった利用者の立場になって考えることが重要だと理解できたのではないでしょうか。デリケートな部分の介護は特に人権や尊厳を守ることが重要になります。忙しさの中でプライバシーへの配慮を忘れてしまったり、早く介助を済ませようと急かしてしまったりといったことはないようにポイントを押さえて介助できるといいですね。