介護だけでなく、医療やリハビリテーションなどさまざまな分野で「QOL」という言葉がよく用いられるようになりました。
このQOLが治療やADLの自立とともに介護分野で非常に重要とされています。
QOLは「Quality of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の略称であり、「生活の質」や「人生の質」と訳されることが一般的です。
今回は、介護のQOLを低下させないための方法についてご説明します。
QOLとは
QOLとは、「人生の質」を意味する言葉として使われることもあり、生活・生命・人生においての幸福さや満足さをあらわしています。
従来までの医療分野では重視されたのは治療であり、リハビリテーションや福祉分野ではADL(日常生活動作)の自立を重視する傾向がありました。
しかし今では、治療とADLの自立だけでなく、本当の幸せとは何か?について考えた際にQOLも考慮される傾向が高まっています。
QOLは相対的かつ主観的
QOLの概念は、歴史的にはソクラテスの「なによりも大切にすべきは、ただ生きることでなく、よく生きることである」といった哲学的追求までさかのぼることができます。
つまり、QOLとは、より多くよりも「より良く」という価値観であり、物質的な豊かさに満たされた生活ではなく、「毎日が充実し、心身が満たされた生活」に焦点をあてた考え方なのです。
これは、絶対的かつ、客観的な物ではありません。相対的かつ主観的なのです。
つまり、こうすれば、皆が幸せになるという決めつけはなく、「一人一人に合わせた幸せがある」という考え方なのです。
介護分野で重視されるQOLとは
介護分野では、介護サービスの利用者が、自分らしく充実した生活を送ることができるかが重要となり、介護を必要とする状態でも生きがいや生きやすさを感じながら暮らすことができる支援が必要とされています。
年齢を重ねていけばだんだんと身体の機能や能力は低下してしまい、これまでであれば自分でできたことができなくなることもあるのです。
そのような高齢の方のQOLを向上させるためには、本人が何を幸せと感じるのかを知らなければなりません。
たとえば誰かの役に立つことが幸せだと感じる方の場合、高齢になって自由に身体を動かすことができない状態にあることで、人の役に立たない人間だと感じてしまう可能性もあります。
このような場合、基本的な生活動作をスムーズにすることを目的として、道具を活用したり運動能力を向上させたりすることで、本人のできることを増やし幸せを見出せることにつながる可能性も出てくるでしょう。その結果としてこの方のQOLを向上させることにつながるといえます。
QOLの低下はどこから起きる?
QOLが低下してしまうのは、本人が幸せと感じることや大切にしていること本当に望んでいるものが叶わなくなるからです。
たとえば、年齢を重ねたことや病気などを患ったことでできていたことができなくなってしまった方がいたとします。そこで周りの人がよかれと思って、手助けをしたとします。しかし、その方が周囲に迷惑をかけることを毛嫌いする方だった場合、周りの方が優しさで手を差し伸べてもQOLは向上しません。
できないことで精神的な落ち込むだけでなく、一方的に支援してもらうことは迷惑をかける行為と感じ、かえってストレスに繋がるからです。
その方のQOLを上げるためには、自力で頑張って貰う、もしくは、自力で頑張れない場合、機材を提供することで解決することでQOLの向上が図れます。
つまり、QOLは、本人がどのようなことで幸せと感じるのか、何を大切にしているかが軸となります。
仮に努力すれば本人ができることなのに手を貸すことで、本人の能力を発揮する機会を奪うだけでなく、QOLも低下させてしまうこととなるでしょう。
そのため客観的な評価や医学的な見解、コミュニケーションなどを踏まえつつ、どこからどこまでサポートするべきかを考えなければならないといえます。
QOL向上のための判断基準の1つであるADLとは
ADLは「Activities of Daily Living」の頭文字を省略した言葉で、日常生活動作または日常生活活動を意味します。
一般的にはADLと呼ばれる動作は、食事・排泄・入浴・更衣・整容・歩行・移乗・階段昇降などが該当します。
ADLが低下すれば活動量も減り、外出を避け家に閉じこもりがちになってしまうため、心身機能もそれに伴い低下することが多くなります。
反対にADLを向上させることにより自立した生活を送ることが可能となり、結果としてQOL向上につながるはずです。
そのため高齢者のADLを維持・向上させることは、QOLを高めるためにも重要なことといえるでしょう。
ADLだけにとらわれないQOL向上を目指す
ADLを向上させることができたとしても、生活の質が低ければ満足度も低下してしまいます。
しかし寝たきり状態でADLは向上できなくても、本人の意思が尊重された状態で介護を受けることができていれば、QOLは高くなると考えられます。
加齢や病気などにより心身機能が低くなった場合や寝たきり状態になった場合でも、QOLを向上させることは可能です。
そのためには、利用者の状態だけで判断せず、支援や福祉用具などをうまく活用し生きがいや楽しみを見つけてもらう工夫が必要となります。
利用者の価値観によりどうすればQOLを向上させることが可能となるかは異なるため、介護を行う支援者の価値観で決めることはできないと留意しておくべきでしょう。
ADLにおいても、できることとできないことだけに注目せず、その人らしい生活とは何か考えて支援することが必要になるのです。
まとめ
介護のQOLを低下させないための方法についてご説明しました。
介護者、一人一人に寄り添いそれぞれ何を求めているかという本質を見極め、何をしてほしいかを言って貰えるような関係性を作ることがQOLの向上になるということがわかったのではないでしょうか?
QOLについて改めて考えてみるのはいかがでしょうか?