介護現場では、利用者に対して「声かけ」を行うことは大切なことです。
しかし「声かけ」の基本的なことが理解できていなければ、間違ったケアを行うことになるだけでなく、利用者を傷つけてしまうことになりかねません。
特に初めて介護現場で働くことになったスタッフなどは、利用者にうまく「声かけ」ができないと悩むこともめずらしいことではないため、利用者に対する「声かけ」で押さえておきたい4つのポイントについて説明していきます。
利用者に対する「声かけ」が重要な理由
そもそも介護現場では、介護スタッフと利用者との間に信頼関係を築くことが重要です。
信頼関係が築けていなければ、円滑なコミュニケーションにつながらず、質の高い介護サービスの提供は難しくなるでしょう。
そこで欠かせないのが「声かけ」ですが、利用者が前向きに日常を送ることのできる言葉や、不安を取り除くことのできる行動を心掛けることが必要です。
正しい「声かけ」を行うことで、利用者の介助や身の回りの世話もスムーズになるなど、介護スタッフにとってもメリットが生まれます。
利用者に対する「声かけ」で意識したい4つのポイント
介護スタッフが現場で利用者に「声かけ」をするときには、次の4つをポイントとして押さえた上で行うようにしましょう。
- 丁寧な「言葉づかい」
- 「抑揚」をつける
- 明るい笑顔など「表情」を意識
- 「身振り」や「手振り」を加える
それぞれ何に注意すればよいか説明していきます。
丁寧な「言葉づかい」
利用者に対して行う声かけで、最も大切になるのは「言葉づかい」です。
介護スタッフから見た利用者の年齢は高いことがほとんどですが、年齢に関係なく敬語を徹底し、丁寧な言葉づかいで声かけを行うようにしましょう。
ただ、敬語を使っていても敬う気持ちのない声かけでは意味がありません。
言葉はどれほど丁寧でも、否定的な言葉や上から目線の言葉、命令口調などでは信頼関係を築くことはできないと認識しておくべきです。
「抑揚」をつける
利用者に対する声かけでは、話すリズムや速度、イントネーションなどにも注意しましょう。
聞こえにくい利用者に対し、早口で話しかけても伝わりにくいでしょうし、小さな声では聞こえません。
言葉に「抑揚」をつけて、ゆっくりと落ちついた大きめの声で、はっきりと声かけをするように心がけてください。
明るい笑顔など「表情」を意識
利用者に対する声かけを行うときには、スタッフの「表情」も重要です。
感情のない能面のような顔で声かけをされても、これから何をするのか利用者は不安になるだけです。
明るい笑顔で声かけをするように心がけ、安心感を与えることのできるように口角を上げて会話するように意識します。
「身振り」や「手振り」を加える
利用者とのコミュニケーションは言葉だけではなく、「身振り」や「手振り」を加えることも重要です。
特に聞こえにくい方などは、耳だけでなく目から得る情報も大切にしています。
非言語コミュニケーションといわれる、表情・目線・動作でコミュニケーションを取ることで、伝えたいことをより明確に相手に伝えることができます。
ただし至近距離であまりに大げさな身振りや手振りをしてしまうと、圧迫感を与えてしまうことになるため注意してください。
介護現場でやってはいけない「声かけ」
声かけがうまくできないという介護スタッフは、まず使ってはいけない言葉や言動に注意するようにしましょう。
その1つが「スピーチロック」ですが、これは利用者の行動を抑制・制限してしまう声かけのことです。
たとえば次のような言葉が挙げられます。
- 「~してください」
- 「~しないでください」
いずれも相手の行動を制限する言葉ですが、ときには利用者の安全や健康を守るために伝えなければならないときもあるでしょう。
そのような場合には、介護スタッフの口調の強さや表情などによって拘束として扱われることになることに留意し、慎重に行うことが必要です。
たとえば話し方や語尾などを柔らかく丁寧な言葉づかいに変え、一方的な声かけになっていないか検討が必要となります。
また、これらの「お願い」を利用者に伝えるときには、なぜ必要なのかその理由を伝えて納得してもらうことも大切といえます。
さらに利用者の意向に反することであるのなら、利用者の方の気持ちを思いやる声かけを心がけ、プライバシーと尊厳を守ることも必要となります。
介護現場で行うケアには、介護スタッフにとっては当たり前の業務でも、利用者にとっては不安や恥ずかしさを感じる行為も含まれます。
たとえば排泄介助や入浴介助などがその例で、家族にも見せたくない部分を他人に任せなければなりません。
そのような利用者の不安や戸惑い、恥ずかしさなどを十分に理解し、思いやりのある声かけを心がけることこそが、介護現場でのサービス向上につながるはずです。