いくつになっても身だしなみやおしゃれに気を使うことは大切なことですが、介護施設で生活している高齢者や在宅で外出困難な高齢の方なども同様です。
ただ、いくらヘアカットなどでヘアスタイルと整えたいと思っても、施設で生活していたり外出困難な状況だったりなどで理美容院まで出かけることが難しいこともあります。
そのような場合には、介護施設や自宅に訪問し、高齢者のヘアカットを行ってくれるサービスを利用するとよいでしょう。
介護保険の対象ではないけれど人気のサービス
介護業界の仕事といえば、介護施設や自宅で生活する高齢者が必要としている入浴や食事、排せつへのサポートなどを思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし実際には介護保険を利用できる身体的な介助以外にも、高齢者に向けたサービスはいろいろあります。
介護施設や自宅に訪問しヘアカットなどを行う訪問理美容(福祉理美容)サービスも、介護保険の対象にならないサービスの1つです。
散髪は介護保険を利用できない?
散髪することは生活を送る上で必要なことですが、介護保険が適用されるサービスではありません。また、入所中の介護施設から理美容院まで行くための交通費なども、介護保険は適用されませんので注意しましょう。
自宅で生活する高齢の方が訪問介護を利用した場合でも、理美容については介護保険サービスとして認められていないので算定時間には含まれません。
そのため多くの介護施設では、理容師や美容師に施設まで訪問してもらい、有料で利用者のヘアカットなどを行ってもらうことが多いようです。
訪問理美容サービスを利用している高齢者は多い
訪問理美容サービスは介護保険適用外でありながら、介護施設で生活する高齢者の約9割、自宅で暮らす高齢の方の約8割が利用した経験ありと答えるほど注目されているサービスです。
特に身だしなみやおしゃれに気を使いたい女性のほうが、男性よりも利用経験は多いようです。
訪問理美容サービスとは、美容師や理容師の国家資格を持ち、さらに介護や医療の知識・経験も兼ね備えた専門スタッフが、介護施設・高齢者施設・障がい者施設・医療機関・自宅などを訪問しヘアカットを中心としたサービスを提供することです。
様々なご事情により、美容院や理容院に行くことが難しい高齢者などが安心して利用できることが特徴で、ヘアカットだけでなくシャンプー、パーマ、カラーなどのサービスが提供されます。
理容師であれば顔そりなども可能なので、男性だけでなく女性からのニーズも高いといえるでしょう。
地域によっては訪問理美容サービスという呼び方ではなく、出張理美容や出張散髪といった名称が使われていることもありますが、いずれも同様のサービスが提供されています。
訪問理美容サービスの特徴
訪問理美容サービスの専門スタッフは、体が不自由な人や寝たきり状態の方、長時間同じ場所に座ったままでいられない方など、特別に配慮を必要とする方に対しても施術を可能とする経験と知識があります。
サロンや店舗でヘアカットなどを行うのなら、専用の椅子やシャンプー台があるので、高さも調整しやすいですし倒して施術を行うこともできるのである程度対応しやすいでしょう。しかし介護施設や自宅などには専用の椅子やシャンプー台はありません。
店に足を運んでもらうときとは違った環境で臨機応変に対応できる技術や知識が必要であり、場所に応じてはシートを敷くといったカット後の髪が散らかることのない配慮なども必要です。
また、シャンプーをするときにはポータブルのシャンプー台を持参することもありますし、訪問先でお湯を提供してもらうことも必要となるでしょう。
そのような限られた環境の中でも、サロンや店舗と変わらないサービスを提供してもらえるのは、介護施設や自宅で過ごす高齢者にとっても喜ばしいことです。
自治体が実施する高齢者出張調髪サービスも利用可能
高齢者にとって大変便利なサービスでありながら、まだ十分に認知されているといえない状況です。
しかし自治体が実施している高齢者出張調髪サービスなどもあり、外出困難な高齢者を対象として地域の理容・美容組合の協力のもとで理容師・美容師が自宅や入院先まで訪問調髪しています。
利用できるには65歳以上の外出困難な高齢者で、介護保険の要介護度3~5の方です。
サービスを利用する場合には、「出張調髪利用申請書」に住所・氏名・要介護認定の内容を記入し、地域包括支援センターの窓口に申請します。
利用できる回数は年6回以内などですが、自治体によって違いがありますので確認してみるとよいでしょう。
また、多くの場合は2か月に1回の割合で利用することになるので、年度途中で申請する場合には申請月により利用可能となる回数が変わる点にも注意しておいてください。
心身障がい者に向けた出張調髪サービスも
高齢者を対象とした出張調髪サービス以外にも、心身障がい者に対してのサービスもあります。
同様に自治体が実施するサービスであり、64才以下で1級・2級の身体障がい者手帳、または1度・2度の愛の手帳を持っている方のうち、在宅で常時複雑な介護を必要としている、または常時寝たきりで店舗でヘアカットするなど難しい状況の方が対象です。
なお、65歳以上の方は介護保険課の制度が優先されます。
調髪券が年に6枚交付され無料でサービスを利用できますが、一定以上の所得のある方や施設入所の方、医療機関などに入院中の方、介護保険課の出張調髪サービスを利用している方は対象となりませんので注意してください。