多くの介護事業を営む経営者は、人手が不足している状態が改善されないことにいら立ちを抱えている状態です。
そこで、これから介護業界で働こうとする方たちは、介護事業所が人手不足解消に向けて行おうとしている取り組みなどについて把握しておきましょう。
介護業界の人手不足の現状
まずは介護業界の人手不足の現状について把握しておきましょう。人手不足の背景にあるのは、日本で進んでいる少子高齢化です。
昨今、日本では社会問題となっている高齢化については、介護業界だけでなく様々な業界にその影響が及んでいる状態です。
そして高齢化が進む一方出生数は低下しているままなので、令和2(2020)年の出生数が約90万人と予測されているのに対し、令和47(2065)年には56万人まで減少すると推計されています。
出生率の低下に伴い、生産年齢人口も減少していけばそもそもの働き手がいなくなる状態になってしまうでしょう。
日本全体で介護を必要とする高齢者は増加する一方で、その事業を支える若者は減少していく悪循環に陥っている状況なのです。
介護現場で働きたい人はなぜ増えない?
介護業界が人手不足という状態に陥っているのは、そもそも若い働き手が減少傾向にあることです。
それに加え介護業界は、労働は激務なのに社会的評価が低く、賃金も仕事の大変さに見合わないというネガティブなイメージが定着してしまっています。
そして介護現場では、同じ職場で働く先輩や同僚、利用者やその家族、医療スタッフなど多専門分野の方など、いろいろな人との関わりがあります。
すべての人間関係がスムーズな状態であるとも限らず、ストレスを感じやすい環境だと感じてしまう方もいるようです。
介護業界の人手不足解消のために行われている対策
介護事業所も、このまま人手不足が続くことを望んでいないため、介護現場で働きたいという方が増え、長く勤めてもらうことができるようにいろいろな対策を講じるようになっています。
職場でスタッフ同士や利用者との円滑な人間関係を築くことができるように、伝達事項をスムーズにミスなく伝えることを可能とする仕組みや、シフトを組む上で不公平が生じない対策など事業所独自の努力も重要だからです。
具体的にどのような対策が行われているか、その例を一部ご紹介します。
① ITやシステムなどを積極的に導入する
利用者に対して行う日々の管理を紙媒体で行うよりは、システムなどを導入することでより円滑に引き継ぎが可能となります。
また、紙媒体では記入ミスなどが起こりやすいですが、システムでればミスを防ぎ時間短縮・作業効率にもつながるでしょう。
シフト管理・勤怠管理アプリなどを積極的に導入し、介護スタッフの負担を軽減しようと取り組む介護事業所も増えてきました。
② ユニットケアの導入
入居者の10人程度を1つのグループとして介護施設で共同生活を送ってもらい、サポートする方法がユニットケアです。
ユニットケアは利用者それぞれの生活を尊重しながら、人と人とのつながりを持ちやすくします。
コミュニケーションが深まることにより、利用者同士、利用者と介護スタッフ、介護スタッフ同士など、人間関係を円滑にすることが期待できるため、介護スタッフもストレスを抱えにくくなるでしょう。
③ 外国人労働者を介護施設にも受け入れる
2019年4月1日の改正入管法により、新しく特定技能の在留資格が創設されました。
それにより、一定の技能や専門的知識、日本語能力を持つ外国人を介護業界でも即戦力として受け入れようという動きが拡大しています。
④ 介護福祉士資格取得を推奨する動き
介護福祉士は介護業界で専門的な知識や技能を持つと認められる国家資格であり、取得することで仕事の幅や賃金待遇も変わります。
そのためスキルやキャリアをアップしたいと考える介護人材に対し、介護福祉士の資格取得に向けた推奨制度などを設けている施設も増えていますし、取得することで手当てを付与するといった動きも多くみられるようになりました。
実際、国でも2019年10月に消費税増税の資金使途として、勤続10年以上の介護福祉士などに対して月額平均8万円相当の処遇改善を実施するといった取り組みも行っています。
介護業界は人手確保が急務の状況
地方では若い働き手が都市部に出てしまうといった悩みを抱えていることもあり、さらに介護事業所などは人手が不足する事態に陥っています。
もともとの若い人材が不足しているエリアなどでは介護業界の人材不足は深刻化している状況のため、より職場環境などを改善させ長く働いてもらえる取り組みなどを実施することが求められている状態です。
ただ、人が集まらなければいくら状況を改善したくてもできません。制度を整備し、介護スタッフに長く働いてもらうためにもまずは人手が必要といえます。
介護業界は資格などがない方でもスタートできることが大きなメリットですので、少しずつ知識や技能を習得しスキルやキャリアアップを目指してみてはいかがでしょう。